属人化を解消するには?危ない業務の見つけ方と、判断の分かれ目まで標準化する手順

「それは〇〇さんに聞かないと分からない」。そんな言葉が毎日のように聞こえるのに、当の〇〇さんは忙しくて手順を書く時間がない。退職や休職の話が出て、ようやく慌てる会社は少なくありません。
属人化の解消は、手順を文章にするだけでは終わりません。本当に引き継ぎにくいのは「この場合は上乗せする」「この客なら値引きする」といった、ベテランの頭の中にある判断です。
この記事では、危ない業務の見つけ方と、その判断を業務フロー図の分岐として書き出し、標準化して定着させる手順を、中小企業の例で解説します。
この記事でわかること
- 属人化の意味と、起きる3つの原因・放っておく4つのリスク
- 危ない業務を見つける7項目のチェックリストと、優先順位の付け方
- ベテランの暗黙の判断を、業務フロー図の「分岐」に書き出す4つのコツ
- 忙しい担当者から判断を聞き出し、標準化を定着させる進め方
属人化とは?起きる3つの原因と放っておく4つのリスク
属人化(ぞくじんか)とは、業務の手順や判断の基準を特定の人だけが知っていて、他の人に引き継がれていない状態のことです。いちばんのリスクは、その人が休んだ日に業務が止まることです。
反対の状態は「標準化」。残してよいのは腕前
辞書で決まった対義語はありませんが、反対の状態を表す言葉としては「標準化」がよく使われます。誰がやっても同じ手順・同じ基準で進められる状態のことです。ベテランの高い専門性そのものをなくす必要はありません。困るのは、判断の基準と手順が本人の頭の中にしかないことです。
属人化が起きる3つの原因
富士通ラーニングメディアの解説では、属人化の原因を次の3つに分けています。この記事のどこで対策するかも並べました。
| 原因 | 中身 | この記事での対策 |
|---|---|---|
| マニュアルが整備されていない | 書いていない、あっても古い | 判断を図の分岐に書く |
| 専門性が高く、割ける人手も少ない | 教える時間も覚える人もいない | 30分ずつの短い聞き取り |
| 立場を守るため標準化に消極的 | 「自分しかできない」が評価になっている | 本人を「基準の持ち主」にする |
放っておくと起きる4つのリスク
- 休んだ日に止まる。たとえば経理が1名の会社でその人が2週間休むと、月次の締めと請求書の発行が遅れます
- 人によって品質や金額がばらつく
- 「〇〇さんに聞かないと分からない」待ちが積み重なる
- 引き継ぎが口頭とOJT頼みになり、新人の立ち上がりが遅れる
ミナミさん
現場の業務改善担当
うちの見積もり、B課長しか値段を決められないんです。でもB課長は仕事ができる人だし、悪いことなんでしょうか?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
B課長が悪いんじゃないよ。困るのは、判断の「ものさし」がB課長の頭の中にしかないこと。腕はそのままに、ものさしだけ外に出すのが属人化の解消なんだ。
危ない業務を見つける7つのチェック項目
全業務を一度に直そうとせず、7つの項目で危ない業務を見つけ、当てはまる数が多いものから1つ選びます。見るのは「1人しかできない」「休むと止まる」「判断が本人の頭の中にある」の3点です。
属人化チェックリスト7項目
ここからは、たとえば従業員15名の金属加工会社A社の場合で考えます。見積もりは月40件で、ベテランの営業課長であるB課長(定年まで2年)が全件の加工費と値引きを決めています。
| No | チェック項目 | 当てはまる例(A社の見積もり) |
|---|---|---|
| 1 | その業務をできる人が1人しかいない | 加工費はB課長だけが決める |
| 2 | その人が1週間休むと、業務が止まるか遅れる | 休みの間は見積もりの回答を待ってもらう |
| 3 | 手順や判断基準が文書・図になっていない(あっても1年以上直していない) | 単価表はあるが、加工費の決め方はどこにもない |
| 4 | 「場合による」「経験で決める」判断がある(金額・可否・順番) | 難しい加工は上乗せ、常連は値引き |
| 5 | 他の人から「〇〇さんに聞いて」という問い合わせが週に何度も来る | 営業3名が毎日B課長の席に来る |
| 6 | 取引先がその人を指名して連絡してくる | 顧客からB課長の携帯に直接電話が来る |
| 7 | 2年以内に退職・異動・定年・休職の予定がある | B課長は2年後に定年 |
優先順位の付け方
数が多い業務のうち、1と2の両方に当てはまり、さらに4にも当てはまるものを最優先にします。休むと止まるうえに、手順を写すだけでは引き継げない判断を含むからです。
記入例:A社の5業務を採点する
| 業務 | 担当 | 当てはまる項目 | 数 | 優先 |
|---|---|---|---|---|
| 見積もり作成 | B課長1名 | 1・2・3・4・5・6・7 | 7 | 最優先 |
| 月次決算 | 経理Cさん1名 | 1・2・3・5・6 | 5 | 2番目 |
| 給与計算 | 経理Cさん1名 | 1・2・3 | 3 | 3番目 |
| 仕入先への発注 | 購買2名 | 3・4 | 2 | 様子見 |
| 出荷手配 | 倉庫3名 | 3 | 1 | 対象外 |
月次決算も数は多いものの、手順は決まっているものの書かれておらず、4の判断が少ないため、見積もりの次に回します。業務の一覧がまだない場合は、先に「業務棚卸のやり方」の記事の手順で一覧を作ると、採点の漏れを防げます。
暗黙の判断を業務フロー図の「分岐」に書き出す4つのコツ
ベテランの判断は、文章の手順書に埋め込むより、業務フロー図のひし形(分岐)として問いの形で書き出すと、どこで何を見て決めているかが他の人にも見えます。頭の中にある判断(暗黙知)を、図や表(形式知)に移す作業です。
コツ1:判断を「〜か?」の問いに言い換える
「難しいのは高めにする」のままでは、何を見て難しいと決めたのかが分かりません。「加工が難しい案件か?」という問いに直すと、答えが「はい」と「いいえ」に分かれ、図の分岐にそのまま置けます。A社の見積もりで書き換えると次のとおりです(数字はA社の場合の例です)。
| ベテランの言い方 | 分岐の問い | 分かれ目の条件 |
|---|---|---|
| 難しいのは高めにする | 加工が難しい案件か? | 板厚3mm超、穴20か所超、公差0.05mm以下のどれか |
| 常連さんには少し引く | リピート客か? | 過去1年に3回以上の発注なら3%値引き、上限5万円 |
| 急ぎは様子を見て受ける | 納期が5営業日未満か? | 工場長に空きを確かめてから回答する |
| 変わった注文は自分が見る | どの条件にも当てはまらないか? | B課長に回す(例外の出口) |
上の2つを図にしたのが図1です。材料費は単価表で誰でも出せますが、加工費と値引きの2か所にB課長の判断が入っていたことが、ひと目で分かります。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 見積もり依頼を受ける
- 営業が要望と図面を受け取る
- 単価表で材料費を出す
- 加工が難しい案件?
- 加工費を上乗せする
- 標準の加工費で計算する
- リピート客?
- 値引きを適用する
- 値引きなしで計算する
- 上長が金額を確認する
- 顧客へ見積書を送る
流れ(矢印)
- 見積もり依頼を受ける → 営業が要望と図面を受け取る
- 営業が要望と図面を受け取る → 単価表で材料費を出す
- 単価表で材料費を出す → 加工が難しい案件?
- 加工が難しい案件? →(はい)→ 加工費を上乗せする
- 加工が難しい案件? →(いいえ)→ 標準の加工費で計算する
- 加工費を上乗せする → リピート客?
- 標準の加工費で計算する → リピート客?
- リピート客? →(はい)→ 値引きを適用する
- リピート客? →(いいえ)→ 値引きなしで計算する
- 値引きを適用する → 上長が金額を確認する
- 値引きなしで計算する → 上長が金額を確認する
- 上長が金額を確認する → 顧客へ見積書を送る
自分の業務に書き換えて送ると、AIが分岐の入ったフローチャートの下書きを作ります。「〇〇か判断する(△△なら□□)」の形で書くのがコツです。
コツ2:分かれ目を数字か条件で書く
「難しい」「常連」といった言葉は、人によって受け取り方が変わります。分岐の問いには、板厚3mm超、過去1年に3回以上といった数字か、はっきりした条件を添えます。数字が決まらないときは、最近の判断から仮の値を置き、次の見積もりで確かめて直せば十分です。たとえば「常連」を「過去1年の発注回数」で数えると決めれば、営業の誰が見ても同じ答えになります。
コツ3:例外の出口と「迷ったら誰に聞くか」を書く
すべての注文を条件で割り切る必要はありません。どの条件にも当てはまらない注文は「B課長に回す」という矢印を残しておきます。よくある判断だけを標準化し、珍しい判断は本人が見る。この線を引くと、本人も「自分の仕事がなくなる」と感じにくくなります。
例外に回った件数を月ごとに数えておき、同じ理由で何度も回ってくるものは、次の条件として図に足していきます。
コツ4:基準が細かいときは下の階層に分ける
条件が増えて1枚に収まらなくなったら、分岐の中身を別の図に分けます。図2は、図1の「加工が難しい案件?」の中身だけを取り出したものです。上乗せの率はA社の場合の例です。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 加工難易度の判定
- 板厚3mm超?
- 上乗せ15パーセントを適用する
- 穴が20か所超?
- 上乗せ10パーセントを適用する
- 公差0.05mm以下?
- 他に気になる点がある?
- B課長に判断を回す
- 標準の加工費にする
- 図1に戻る
流れ(矢印)
- 加工難易度の判定 → 板厚3mm超?
- 板厚3mm超? →(はい)→ 上乗せ15パーセントを適用する
- 板厚3mm超? →(いいえ)→ 穴が20か所超?
- 穴が20か所超? →(はい)→ 上乗せ10パーセントを適用する
- 穴が20か所超? →(いいえ)→ 公差0.05mm以下?
- 公差0.05mm以下? →(はい)→ 上乗せ15パーセントを適用する
- 公差0.05mm以下? →(いいえ)→ 他に気になる点がある?
- 他に気になる点がある? →(はい)→ B課長に判断を回す
- 他に気になる点がある? →(いいえ)→ 標準の加工費にする
- 上乗せ15パーセントを適用する → 図1に戻る
- 上乗せ10パーセントを適用する → 図1に戻る
- B課長に判断を回す → 図1に戻る
- 標準の加工費にする → 図1に戻る
DrillSparkでは、図の中に下の階層(サブプロセス)を作ってドリルダウンできます。上の図1で流れをつかみ、下の図2で細かい基準を確かめる、という使い分けができます。
ミナミさん
現場の業務改善担当
条件を数字で書けって言われても、B課長は「見れば分かる」としか言わないんです…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
「見れば分かる」の中身は、最近の3件を並べて「なぜこっちは上乗せしたの?」と聞くと出てくるよ。聞き方は次の章で話すね。
忙しいベテランから判断を聞き出す5つの方法
忙しい本人に「全部書いてください」と頼むのではなく、30分ずつの短い聞き取りを数回に分け、周りの人が作った図の下書きを本人に直してもらいます。こうすると、本人の仕事を止めずに判断を引き出せます。
方法1:1回30分を3回に分ける
1回目は業務の流れ、2回目は判断の分かれ目、3回目は例外と断る条件、とテーマを分けます。1回で全部を聞こうとすると、まとまった時間が取れずに先延ばしになりがちです。30分なら、忙しい時期でも予定に入れやすくなります。業務の一覧を作るだけなら1人15分の聞き取りで足りますが(「業務棚卸のやり方」の記事)、判断の中身まで聞き出すにはこのくらいの時間が要ります。
方法2:白紙から聞かず、下書きの図を直してもらう
1回目の聞き取りメモから、聞き手が先に図の下書きを作ります。手書きでも構いませんし、メモをAIに渡してフローチャートの下書きを作らせる方法もあります。「AIで属人化を解消する」と言うとき、AIが役に立つのは多くの場合この下書きづくりです。ただし、判断の中身が正しいかは必ず本人が確かめます。
本人にとっても、白紙に書くより、間違いに赤を入れるほうがずっと楽です。「ここは違う、実際は工場長に聞いてから決めている」といった直しが、そのまま分岐の条件になります。
方法3:最近の実例3件を並べて聞く
「どうやって決めていますか」と聞かれても、ベテランは「見れば分かる」としか答えられないことがあります。先月の見積もりを3件並べて「この2件、上乗せした方としなかった方の違いは何ですか」と聞くと、基準が言葉になって出てきます。
方法4:「やらないこと」と「迷ったときの相談先」も聞く
判断には、受ける条件だけでなく断る条件もあります。「この材料は外注に回す」「この納期なら受けない」といった線と、迷ったときに誰に相談するかを聞いておくと、図に例外の出口が書けます。聞き方を変えるだけで、答えの具体さは大きく変わります。
| 避けたい聞き方 | 代わりの聞き方 | 理由 |
|---|---|---|
| 手順を全部書いてください | この下書きの間違いに赤を入れてください | 書く負担を周りが持てる |
| どうやって決めていますか | 先月のこの2件、上乗せした方としなかった方の違いは? | 実例だと基準が言葉になる |
| いつもどうしていますか | うまくいかなかった時、どうしましたか | 例外の出口が見つかる |
| 全部教えてください | 迷ったら誰に聞けばいいですか | 全部を標準化しない線が引ける |
方法5:本人を「基準の持ち主」にして立場を守る
標準化に消極的な理由が「自分しかできないことが評価になっている」なら、役割を置き直します。B課長には判断の基準を決めて直す人になってもらい、基準を変えるときはB課長のOKが要る、と決めておきます。仕事を取り上げるのではなく、基準の持ち主として名前が残る形です。
たとえばA社の場合、総務のDさんがB課長に30分ずつ3回、計90分の聞き取りをしました。先月の見積もり12件を3件ずつ並べて比べ、上乗せと値引きの条件を4つ書き出しています。B課長がしたのは、Dさんが作った下書きの図に赤を入れることだけでした。
ミナミさん
現場の業務改善担当
「自分の仕事を取られる」ってB課長に思われそうで、頼みづらいです…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
取り上げるんじゃなくて「基準を決める人」になってもらうんだ。基準を変えるときはB課長のOKが要る、と決めておけば、立場はむしろはっきりするよ。
業務標準化の進め方5ステップ
業務標準化は「1つの業務を選ぶ → 流れと分岐を図にする → 本人が直す → 別の人が図だけで実際にやる → 基準の持ち主と更新ルールを決める」の5ステップで進めます。4つ目で手が止まった所を書き足すことを繰り返すと、図が仕上がります。
業務標準化とは
業務標準化とは、誰がやっても同じ手順・同じ基準で、同じ結果になる状態にすることです。属人化の解消は、この標準化を危ない業務から順に進めることだと言えます。
5つのステップ
- 危ない業務を1つ選ぶ:7項目のチェックで最優先になった業務から始める
- 流れと分岐を図にする:30分ずつの聞き取りで、判断を問いと条件に書き換える
- 本人が図を確かめて直す:条件の数字と例外の出口が合っているかを見てもらう
- 別の人が図だけで実際にやる:途中で手が止まった所に印を付け、判断を書き足す
- 基準の持ち主と更新ルールを決める:誰が基準を変え、誰がいつ図を直すかを決める
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 危ない業務を1つ選ぶ
- ベテランに30分ずつ聞き取る
- 流れと判断の分岐を図に書く
- 本人が図を確かめて直す
- 別の人が図だけを見て実際にやる
- 途中で手が止まった?
- 止まった所の判断を書き足す
- 基準の持ち主と更新ルールを決める
- 副担当が定期的に担当する
流れ(矢印)
- 危ない業務を1つ選ぶ → ベテランに30分ずつ聞き取る
- ベテランに30分ずつ聞き取る → 流れと判断の分岐を図に書く
- 流れと判断の分岐を図に書く → 本人が図を確かめて直す
- 本人が図を確かめて直す → 別の人が図だけを見て実際にやる
- 別の人が図だけを見て実際にやる → 途中で手が止まった?
- 途中で手が止まった? →(はい)→ 止まった所の判断を書き足す
- 止まった所の判断を書き足す → 別の人が図だけを見て実際にやる
- 途中で手が止まった? →(いいえ)→ 基準の持ち主と更新ルールを決める
- 基準の持ち主と更新ルールを決める → 副担当が定期的に担当する
図3のとおり、代行テストと書き足しは1回で終わるとは限りません。何度か回るものと考え、1回目で完璧な図を目指さないことが、途中で止めないコツです。
別の人が図だけでやってみる「代行テスト」
ステップ4は、図の出来を確かめるいちばん確実な方法です。本人が読むと、書いていない判断を頭の中で補ってしまうため、抜けに気づけません。業務を知らない人が図だけでやると、抜けている所で必ず手が止まります。
たとえばA社の場合、若手営業のEさんが図1と図2だけを見て見積もりを3件作り、B課長が出した金額と比べました。ずれた1件は、図に書いていなかった「支給材(お客様が材料を持ち込む注文)は材料費を入れない」という判断が原因でした。この判断を分岐に書き足して、もう一度試します。
合格の目安も先に決めておきます。A社の場合は「3件とも、B課長の金額との差が3%以内」としました。目安がないと、どこまで書き足せば終わりかが決まらず、図づくりがいつまでも続きます。
図・判断基準表・マニュアルの役割分担
1つの文書に全部を書き込もうとすると、どれも読みにくくなります。置き場所を分けると、基準が変わったときに直す場所もはっきりします。
| 置き場所 | 書くもの | A社の例 |
|---|---|---|
| 業務フロー図 | 流れ・担当・判断の分かれ目 | 見積もりの流れと、加工費・値引きの2つの分岐 |
| 判断基準表・単価表 | 分岐の条件の数字 | 上乗せの率・値引きの上限 |
| マニュアル・手順書 | 1つの作業のやり方(画面操作など) | 見積もりシステムへの入力方法 |
マニュアルの書き方そのものは「業務マニュアルの作り方」の記事で扱っています。判断の分岐と差し戻しの形は、完成した見本を見てからまねると書き始めやすくなります。
標準化を定着させる3つの仕組み
図を作っても、副担当が実際にその業務をやる機会と、基準を変えたら図も直すルールがなければ、図はやがて実態とずれ、元の属人化に戻ります。定着させる仕組みは次の3つです。
仕組み1:スキルマップで「できる人が2人以上」を見える化する
スキルマップとは、業務と人を掛け合わせた表に、どこまでできるかを記号で書き込んだものです。ここでは◎をひとりでできる、○を図を見ればできる、△を教わり中とします。A社の場合は次のようになります。
| 業務 | B課長 | 営業Eさん | 営業Fさん | 経理Cさん | 総務Dさん |
|---|---|---|---|---|---|
| 見積もり作成 | ◎ | ○ | △ | - | - |
| 大口案件の値引き判断 | ◎ | - | - | - | - |
| 月次決算 | - | - | - | ◎ | △ |
見積もり作成には○のEさんがいますが、大口案件の値引き判断はまだB課長1人です。月次決算も◎はCさんだけで、Dさんは教わり中です。◎か○が1人しかいない行が、次に標準化する候補になります。
記号を付け替える基準も表の下に書いておきます。たとえば、代行テストに合格したら○、本番をひとりでこなせたら◎とし、3か月に1回見直すと決めれば、付け方が人によってぶれません。
仕組み2:副担当に月1回、本番の業務を担当させる
図を読んだだけでは、業務は身につきません。副担当に月1回は本番の見積もりを任せ、B課長は確認に回ります。担当を定期的に入れ替えるジョブローテーションや、1人が複数の業務をこなせるようにする多能工化も、同じ考え方です。
たとえばA社の場合、毎月最初の見積もり5件はEさんが担当し、B課長は金額の確認だけをする、と決めました。Eさんが迷った所は、その日のうちに図に書き足します。本番で使うたびに、図が少しずつ実態に近づいていきます。
仕組み3:基準を変えたら、図を直すまでを変更とする
値引きの上限を変えたのに図が古いままだと、図を見た人が間違えます。基準の持ち主がOKを出したら、その日のうちに分岐の数字を直すところまでを「変更」と決めておきます。直す担当と、見直す時期(たとえば半年に1回)も決めておくと、放置されにくくなります。
ミナミさん
現場の業務改善担当
作った図、半年後に誰も見てない気がします…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
見られない図は、仕事の中に入ってないだけ。副担当が本番でその図を使う日を月1回決めておくと、古い所にすぐ気づけるよ。
属人化の解消でよくある4つの失敗と対策
失敗の多くは「全部を一度に」「手順だけ書いて判断を書かない」「本人を外して進める」「作って直さない」の4つです。いずれも、1業務ずつ・判断まで・本人と一緒に・直す人を決める、で防げます。
| 失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 全業務を一度に標準化しようとする | 途中で止まり、どれも中途半端になる | チェックリストの上位1業務から |
| 手順だけ書いて判断を書かない | 図はあるのに「結局B課長に聞く」 | 分岐と条件の数字まで書く |
| 本人を外して周りだけで作る | 中身が違う、本人が協力しなくなる | 聞き取りと「基準の持ち主」 |
| 作って終わりにする | 実態とずれて使われなくなる | 副担当の本番担当と更新ルール |
失敗1:全業務を一度に標準化しようとする
全社の業務を一斉に図にしようとすると、聞き取りの時間が足りず、どれも途中で止まります。チェックリストで最優先になった1業務を仕上げ、代行テストが通ってから次へ進みます。
失敗2:手順だけ書いて判断を書かない
「材料費を出す → 加工費を出す → 送る」と手順だけ並べても、加工費をどう決めるかが書いていなければ、結局ベテランに聞くことになります。判断は分岐の問いと条件の数字まで書き、当てはまらないものは例外の出口へ流します。
失敗3:本人を外して周りだけで作る
本人が忙しいからと周りだけで作ると、条件が実際と違ったり、本人が「勝手に決められた」と感じて協力しなくなったりします。聞き取りは短く分けて本人の時間を守り、最後は本人に直してもらいます。
失敗4:作って終わりにする
図を作った時点で満足すると、基準が変わっても図は古いままになり、やがて誰も見なくなります。副担当が本番で図を使う日と、基準を変えたら図も直すルールをセットで決めておきます。
まとめ|まず危ない業務を1つ選んで図にしよう
この記事のまとめ
- 属人化は、手順と判断の基準が特定の人の頭の中にしかない状態。腕前ではなく基準を外に出す
- 7項目のチェックで、1人しかできない・休むと止まる・判断を含む業務を最優先に選ぶ
- 暗黙の判断は「〜か?」の問いと数字の条件にして、業務フロー図の分岐に書く。例外の出口も残す
- 聞き取りは30分ずつに分け、下書きの図を本人に直してもらい、代行テストと更新ルールで定着させる
属人化の解消は、ベテランの腕前を平均化することではありません。判断のものさしを図と表に移し、ほかの人も同じ判断ができるようにすることです。全部を一度にやる必要はなく、危ない業務を1つ選ぶところから始められます。
まずはチェックリストで1つの業務を選び、聞き取りメモを日本語で書き出してみてください。DrillSparkに渡すとAIがフローチャートの下書きを作り、AIと対話しながら直せます。分岐の条件は、できた図を本人に見せて確かめてもらいましょう。無料プランがあり、クレジットカードは不要です。
まず1つの業務を、判断の分かれ目まで図にしてみましょう。
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