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自動化する業務の選び方|RPA・AIに向く5つの基準と、人の確認を残す工程の決め方

公開日 約11分で読めます
明るいオフィスでノートPCを操作する手元

「AIで何か自動化して」と言われたものの、どの業務から手を付ければよいか分からない。RPAを入れたのに、いつの間にか使われなくなった。2026年版の中小企業白書でも、中小企業がAI活用に取り組まない理由で最も多かったのは「活用する業務がイメージできていない」でした。

つまずきの多くは、ツールを先に決めて、業務の選び方と任せ方を後回しにすることから起きます。この記事では、自動化に向く業務を5つの基準で選び、業務フローの工程ごとに「なくす」「RPA」「AI」「人が確認」「人が判断」の印を付けて任せる範囲を決める手順を、受注処理の例で解説します。

この記事でわかること

  • 自動化に向く業務を選ぶ5つの基準と、候補を比べる判定表
  • 自動化の前に「なくす・まとめる・入れ替える」を見る理由
  • RPAとAIの得意な作業と「間違え方」の違い
  • 業務フローの工程に5つの印を付けて、AIに任せる所と人の確認を残す所を決める手順
  • 稟議に出す前にそろえる3つの準備と、よくある失敗の避け方

自動化に向く業務を選ぶ5つの基準と判定表

候補の業務は「量・手順・入力・間違えたときの影響・この先も続くか」の5つで比べ、年間の作業時間が多く、手順を言葉にでき、入力がデータになっている業務から選びます。ツールを先に決めるのではなく、業務を先に決めるのが順番です。

この記事では、自動化の候補がいくつか挙がっている前提で進めます。候補の洗い出しそのものは「業務棚卸のやり方」の記事で扱っています。「業務改善の進め方」の記事の6ステップでいえば、改善策を立てるステップ4の中で、自動化を選ぶときの判断に当たります。

判定の流れ:自動化の前に「なくせないか」を先に見る

判定は、いきなり「自動化できるか」から始めないのがコツです。最初に「その業務はなくせないか」を見て、残った業務だけを年間の作業時間・手順・入力の順にふるいにかけます。5つの基準のうち「続く期間」は廃止予定の業務として最初の「なくせるか」で落ち、「影響」は着手するかではなく人の確認の置き場所を決める材料なので、図1には入れていません。

図1:自動化に着手するかの判定の流れ(なくせないかを最初に見る)
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 候補の業務
  2. なくせるか?
  3. やめる・まとめる
  4. 年間の作業時間は多いか?
  5. 後回しにする
  6. 手順を言葉にできるか?
  7. 先に手順をそろえる
  8. 入力はデータになっているか?
  9. 先にデータにする
  10. 工程ごとに印を付ける

流れ(矢印)

  • 候補の業務 → なくせるか?
  • なくせるか? →(はい)→ やめる・まとめる
  • なくせるか? →(いいえ)→ 年間の作業時間は多いか?
  • 年間の作業時間は多いか? →(少ない)→ 後回しにする
  • 年間の作業時間は多いか? →(多い)→ 手順を言葉にできるか?
  • 手順を言葉にできるか? →(できない)→ 先に手順をそろえる
  • 手順を言葉にできるか? →(できる)→ 入力はデータになっているか?
  • 入力はデータになっているか? →(紙・FAX・電話)→ 先にデータにする
  • 入力はデータになっているか? →(メール・システム)→ 工程ごとに印を付ける

図1で「先に手順をそろえる」「先にデータにする」に進んだ業務は、自動化をあきらめるという意味ではありません。自動化の前に、もう一段の準備が要るという意味です。

5つの基準と、◎○△の付け方

5つの基準は次の表のとおりです。◎と△の目安は、この記事で例として置いた値です。業種や会社の規模で変わるので、自社で使うときは候補どうしを比べて相対的に付ければ十分です。

基準見る点◎の目安(この記事での目安)△の目安(この記事での目安)
量1件の時間×件数で出す年間の作業時間年500時間以上年50時間未満
手順手順を言葉にできるか、例外はどのくらいか例外が1割未満担当者ごとにやり方が違う
入力入力がデータになっているかメール・システムの画面紙・FAX・電話
影響間違えたとき社外に出るか、取り消せるか社内で直せる支払い・契約・顧客への約束
続く期間来期も同じ形で続くか当面変わらない廃止や制度変更の予定がある

年間の作業時間は「1件の時間×1日の件数×年間の営業日数」で出します。たとえば1件8分・1日40件・月20営業日なら、8分×40件×20日×12か月=76,800分で、年約1,280時間です。件数が多い業務ほど、1件あたり数分の差が年間で大きな時間になります。

自動化に向かない業務の3つの形

  • 年に数回しかない業務:仕組みを作って保守する手間のほうが、手作業の時間より大きくなりがちです
  • 毎回やり方が違い、判断が中心の業務:価格交渉や採用の見極めのように、正解が案件ごとに変わる仕事です
  • 近く廃止・変更が決まっている業務:システムの入れ替えや制度の変更が控えていると、作った仕組みがすぐ使えなくなります

「向かない」は「ずっと向かない」ではありません。担当者ごとに手順が違う業務は手順をそろえれば、紙で届く業務はデータにすれば、候補に戻ってきます。

例:部品商社が3つの候補を比べた判定表

たとえば従業員30名の部品商社で、社長から「AIで何か自動化できないか」と言われた総務兼DX担当が、3つの候補を比べたとします。

業務年間の作業時間手順入力影響判定
受注処理◎(1日40件×8分で年約1,280時間)○(例外は在庫切れとFAX注文)○(メール9割・FAX1割)△(注文請書が顧客に届く)最優先。ただし人の確認を残す
月次営業報告書の作成○(月1回×6時間で年72時間)◎◎(販売管理のデータ)◎(社内だけ)受注処理と比べると量が少ない。先に「誰が読んでいるか」を確かめる
面接日程の調整○(月15件×20分で年60時間)△(候補者ごとに調整)○(メール)○後回し

3つとも「この先も続くか」は当面変わらない前提です。受注処理は影響が△ですが、候補から外すのではなく「人の確認を残して自動化する」と判定しています。影響の大きさは、自動化するかどうかより、どこに人の確認を置くかを決める材料になるからです。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

うちも「とりあえずAIで報告書を自動で作れないか」って話になってるんですが……。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

年に72時間の仕事を自動化する前に、その報告書を誰が読んでいるかを先に聞いてみよう。量の基準で見ると、毎日5時間以上かかっている受注処理のほうが先なんだ。

判定で上位に来た業務を1つ、まず業務フロー図にしてみてください。この記事の後半では、その図の工程1つずつに印を付けて、AIに任せる所と人が確認する所を決めていきます。

自動化の前にやる3つの見直し|なくす・まとめる・入れ替える

自動化する前に「なくせないか」「まとめられないか」「順番や担当を入れ替えられないか」を先に問わないと、要らない作業を速くするだけになります。判定の流れ(図1)の最初に「なくせないか」を置いたのは、このためです。

要らない作業を自動化すると、要らない作業が速く回るだけ

ECRS(イクルス)は、排除(なくす)→結合(まとめる)→再配置(順番や担当を入れ替える)→簡素化(簡単にする)の順で業務を見直す、改善の4原則です。自動化やAIの導入は最後のS(簡素化)に当たります。

4原則そのものの説明は「ECRS(イクルス)とは?」の記事で扱っています。この記事では、最初の3つを自動化の前の「問い」として使います。

3つの問い(なくす・まとめる・入れ替える)

業務フロー図を見ながら、次の3つを工程ごとに確かめます。どれかに当てはまった工程は、自動化の候補から外れるか、形が変わります。

問い業務フロー図で見る所部品商社の例
なくせないか誰も使っていない書類、二重の確認月次営業報告書は2人しか読んでおらず、内容は会議で口頭説明していた。報告書をやめ、会議資料に3行を足した
まとめられないか同じ相手に何度も送っている、同じ内容を2回入力している工程注文請書と出荷案内を別々のメールで送っていた。1通にまとめた
順番や担当を入れ替えられないか待ちや戻りが起きる工程、入力の形を変えられる工程FAXで注文する取引先3社に、メールかWebフォームへの切り替えを頼んだ。「FAXを書き写す」工程そのものが消えた

例:報告書とFAX注文で見直した結果

たとえば判定表で「量が少ない」とされた月次営業報告書は、自動化を検討する前に読み手を聞いたところ、2人しか読んでいませんでした。この場合、年72時間の作業は自動化するまでもなく、ほぼなくなります。

受注処理でも、FAXの取引先がメールに切り替えてくれれば、FAXの文字をAIに読ませる仕組みを作る必要すらなくなります。切り替えられない取引先が残る場合だけ、その工程をどう扱うかを後の章の印で決めます。

AIに作らせる前に、その成果物を誰が何に使っているかを、まず1人に聞いてください。数分の聞き取りで、自動化の検討そのものが要らなくなることがあります。

RPAとAIの違い|工程は3種類に分けられる

RPAは「決まった画面操作をそのまま繰り返す」道具、生成AIは「形のそろわない文章を読む・分ける・下書きする」道具で、どちらにも任せられない「判断と責任」が人に残ります。判定表で選んだ業務も、中の工程を見るとこの3種類に分かれます。

RPAが得意なこと:決まった手順の画面操作

RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上の定型操作をソフトに記録させて、自動で繰り返す仕組みです。受注システムへの転記、在庫の照会、決まった文面のメール送信のように、手順が完全に決まっている作業に向きます。

AIが得意なこと:形のそろわない文章を読む・分ける・下書きする

生成AIは、書き方が人ごとに違うメールやPDFから必要な項目を抜き出したり、問い合わせを種類ごとに分けたり、返信の下書きを作ったりするのが得意です。RPAでは扱いにくかった「毎回少しずつ形が違う入力」を受け持てます。

たとえば受注処理なら、1通の注文メールから品番・数量・希望納期の3項目を抜き出す工程がAI、その3項目を受注システムに入力する工程がRPA、在庫がないときに顧客と納期を相談する工程が人、という分け方になります。1つの業務の中で、両方を組み合わせることは珍しくありません。

観点RPA生成AI人
得意な作業決まった画面への入力・照会文章を読む・分ける・下書きする例外の扱い・約束・最終判断
入力の形決まった画面・表メール・PDF・自由記述形を問わない
手順の決まり方完全に決まっている多少ゆれてよい案件ごとに違ってよい
間違え方画面や項目が変わると止まりやすい止まらずに、もっともらしく間違える慣れや思い込みで見落とす
向く作業の例システムへの転記、定型メールの送信注文メールの項目の抜き出し、返信の下書き値引き、納期の約束、例外の受け付け

2つは間違え方が違う

RPAは画面や項目の配置が変わると止まりやすい一方、止まるので「おかしい」と気づけます。生成AIは、文法的には正しいのに事実と違う内容を出すことがあり、止まらずにもっともらしく間違えます。

この「止まる間違い」と「気づかれにくい間違い」の差が、人の確認を置く場所を決めます。次の章で工程に印を付けるときは、【AI】を付けた工程のすぐ後ろに、人がどう確かめるかを必ずセットで考えてください。

業務フローの工程に5つの印を付ける4ステップ

業務単位で「自動化する」と決めたら、次は業務フロー図の工程1つずつに「なくす」「RPA」「AI」「人が確認」「人が判断」の印を付け、任せる範囲を工程の単位で決めます。業務を丸ごと自動化しようとすると、例外の多い工程に引きずられて、結局手作業に戻りやすいからです。

5つの印と付け方の基準

迷いやすいのは【AI】と【人が確認】の境目です。AIが読んだ結果を人が見る工程は、【AI】の工程とは別に【人が確認】の工程として描きます。

印付ける工程受注処理の例
【なくす】自動化の前の見直し(なくす・まとめる・入れ替える)で、要らないと分かった工程FAXの内容を書き写す
【RPA】決まった画面への入力・照会、定型メールの送信受注システムへの入力、在庫の照会、注文請書の送信
【AI】形のそろわない文章を読んで項目に分ける、下書きする注文メールから品番・数量・希望納期を抜き出す
【人が確認】結果が社外に出る、取り消しにくい工程の手前注文請書を送る前の確認
【人が判断】例外・交渉・約束が絡む工程在庫切れのときの納期の相談

印は、工程名の頭に【AI】のように書き添えるだけで十分です。専用の記号や書式は要りません。

ステップ1:現状の流れを図にする

まず、今の受注処理を始まりから終わりまで図にします。理想の流れではなく、FAXの書き写しや上長の全件確認のような「今やっていること」をそのまま描くのがポイントです。記号や描き方は「業務フローの作り方」の記事で扱っています。

ステップ2:工程ごとに印を付ける

図の工程を1つずつ見て、5つの印のどれかを付けます。迷ったら「この工程の入力は決まった画面か、形のそろわない文章か」「結果が社外に出るか」の順に考えると決めやすくなります。

図2:現状の受注処理の工程に5つの印を付けた例
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 注文が届く
  2. 届いた手段は?
  3. 【AI】注文内容を読む
  4. 【なくす】FAXの内容を書き写す
  5. 【RPA】受注システムに入力する
  6. 【RPA】在庫を確認する
  7. 在庫はあるか?
  8. 【人が確認】上長が全件を確認する
  9. 【人が判断】顧客と納期を相談する
  10. 【RPA】注文請書をメールで送る
  11. 完了

流れ(矢印)

  • 注文が届く → 届いた手段は?
  • 届いた手段は? →(メール)→ 【AI】注文内容を読む
  • 届いた手段は? →(FAX)→ 【なくす】FAXの内容を書き写す
  • 【AI】注文内容を読む → 【RPA】受注システムに入力する
  • 【なくす】FAXの内容を書き写す → 【RPA】受注システムに入力する
  • 【RPA】受注システムに入力する → 【RPA】在庫を確認する
  • 【RPA】在庫を確認する → 在庫はあるか?
  • 在庫はあるか? →(ある)→ 【人が確認】上長が全件を確認する
  • 在庫はあるか? →(ない)→ 【人が判断】顧客と納期を相談する
  • 【人が判断】顧客と納期を相談する → 【人が確認】上長が全件を確認する
  • 【人が確認】上長が全件を確認する → 【RPA】注文請書をメールで送る
  • 【RPA】注文請書をメールで送る → 完了

図2では、FAXの書き写しに【なくす】が付いています。自動化の前の見直し(なくす・まとめる・入れ替える)の章で、取引先にメールへの切り替えを頼むと決めたからです。在庫切れのときの納期の相談は、顧客への約束が絡むので【人が判断】のまま残します。

ステップ3:人の確認は「条件」で絞る

印を付けると、上長の全件確認が気になってきます。全件を人が見るなら、前の工程を自動化しても上長の待ちは減りません。そこで確認を「条件」で絞ります。

たとえば、金額50万円以上の注文だけ上長が確認し、それ以外は担当者がAIの読み取り結果と元のメールを見比べる、と決めたとします。1日40件のうち50万円以上が4件なら、上長の確認は1日40件から4件になります。

ステップ4:印を付けた後の流れを描き直す

最後に、印に合わせて流れを描き直します。【なくす】の工程は消し、【人が確認】には条件の分岐を入れ、【AI】【RPA】の工程は誰(何)がやるのかを工程名に書きます。

図3:印を付けた後の受注処理(FAXの書き写しをなくし、人の確認は金額で絞る)
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 注文メールが届く
  2. 【AI】品番・数量・納期を抜き出す
  3. 【RPA】受注システムに入力する
  4. 【RPA】在庫を照会する
  5. 在庫はあるか?
  6. 【人が判断】担当が顧客と納期を相談する
  7. 金額は50万円以上か?
  8. 【人が確認】上長が内容を確認する
  9. 【人が確認】担当が読み取り結果と原文を見比べる
  10. 【RPA】注文請書を送る
  11. 完了

流れ(矢印)

  • 注文メールが届く → 【AI】品番・数量・納期を抜き出す
  • 【AI】品番・数量・納期を抜き出す → 【RPA】受注システムに入力する
  • 【RPA】受注システムに入力する → 【RPA】在庫を照会する
  • 【RPA】在庫を照会する → 在庫はあるか?
  • 在庫はあるか? →(ない)→ 【人が判断】担当が顧客と納期を相談する
  • 在庫はあるか? →(ある)→ 金額は50万円以上か?
  • 【人が判断】担当が顧客と納期を相談する → 金額は50万円以上か?
  • 金額は50万円以上か? →(はい)→ 【人が確認】上長が内容を確認する
  • 金額は50万円以上か? →(いいえ)→ 【人が確認】担当が読み取り結果と原文を見比べる
  • 【人が確認】上長が内容を確認する → 【RPA】注文請書を送る
  • 【人が確認】担当が読み取り結果と原文を見比べる → 【RPA】注文請書を送る
  • 【RPA】注文請書を送る → 完了

図2と図3を並べると、FAXの工程が消え、上長の確認が条件付きになり、在庫切れの相談は人に残り、注文請書は確認の後に送る、という変化が一目で分かります。1件8分のうち人の手が残るのは確認の数分、という見込みもこの図から立てられます。ただし、これは見込みです。実際の時間は、試してから測ります。

DrillSparkでは、日本語で業務の流れを説明するとAIがフローチャートの下書きを作り、対話しながら直せます。工程名の頭に【AI】【人が確認】のような印を書いておけば、チームで図を見たときに、どこまで任せているかがすぐ分かります。

人の確認を残す工程を決める3つの問い

人の確認は全工程ではなく、「結果が社外に出る」「間違えると取り消せない」「判断の理由を説明する必要がある」の3つに当てはまる工程の手前にだけ残します。どこにでも人を置くと、自動化した意味がなくなるからです。

3つの問い

問い当てはまる工程の例残し方
結果が社外に出るか注文請書・見積書・顧客への返信送る前に担当者が確認する
間違えると取り消せないか支払い・発注の確定・データの削除実行のボタンは人が押す
判断の理由を説明する必要があるか値引き・与信・例外の受け付けAIは材料をそろえるまで。決めるのは人

線引きは「作業の種類」ではなく「間違えたときに何が起きるか」で決めます。同じAIの下書きでも、社内メモの言い回しと顧客への納期回答では、人が見る必要の重さがまったく違います。

AIの工程のすぐ後は、確認のしかたを具体的に決める

RPAの間違いは止まるので気づけますが、AIはもっともらしく間違えます。工程に「AIの結果を確認する」とだけ書くと、確認する人は何を見ればよいか分からず、ざっと眺めて終わりになりがちです。

受注処理なら「品番・数量・希望納期の3項目を、元のメールと見比べる」のように、見る項目と見比べる相手まで工程に書きます。確認にかかる時間も、1件あたり1〜2分など目安を決めておくと、確認が重くなりすぎたときに気づけます。

漫然とした全件の目視確認は長続きしない

変化のほとんどない画面を人が見続ける監視は長く続かない、という指摘は、Bainbridge(1983)の論文「Ironies of Automation(自動化の皮肉)」をはじめ、自動化の研究で古くからあります。何を見るか決めずに全件を眺める設計は、最初は丁寧でも、だんだん「見ているつもり」の確認になりがちです。

ただし、図3の担当者の確認のように、見る項目(品番・数量・希望納期)と見比べる相手(元のメール)が決まった短い照合は、全件でも続けられます。長続きしないのは、何を見るか決まっていない「全件の眺め」です。上長の承認のような重い確認は、金額などの条件で絞るか、抜き取りにします。

最初は確認の範囲を広めにとり、確認で直した件数を見ながら狭めていくと安全です。承認・エスカレーション・定期監査といった確認の型は、「AIエージェントと人間の業務設計」の記事で詳しく扱っています。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

AIがやった分も、結局ぜんぶ見ないと怖くて……。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

何も決めずに全部眺めるなら、自動化した意味がなくなるよ。見る項目を決めた短い照合なら全件でも続くよ。上長の確認は「この条件のときだけ見る」と図に書いておけば、見る人も見なくていい人も迷わない。最初は広めに見て、直した件数が減ってきたら絞ればいいんだ。

稟議に出す前にそろえる3つの準備

稟議には「今かかっている年間の作業時間」「自動化する工程と人が残る工程を描いた図」「小さく試す範囲と期間」の3つをそろえます。この3つがあると、上長は「何に、どこまで任せ、失敗したらどうなるか」を1回で判断できます。

今の作業時間を数週間記録して年間の時間にする

自動化の前に、今の1件あたりの時間と件数を記録します。期間は2〜4週間ほどが目安です。月末に注文が集中するなど忙しい時期がある業務は、その時期を含めたかどうかも書き添えます。導入前の数字がないと、試した後に「速くなったか」を誰も言えなくなります。

印を付けた図を1枚添える

図3のように印を付けた図を添え、「どこまで自動化し、どこに誰の確認を残すか」を1枚で見せます。【人が確認】【人が判断】の工程には担当者の名前か役職を書き、責任の所在をはっきりさせます。文章だけの稟議より、読み手が質問すべき所を見つけやすくなります。

1業務・1か月で小さく試す

最初から業務全体を自動化せず、一部の工程で試します。受注処理なら「注文メールの読み取りと受注システムへの入力だけ」を1か月試し、人の確認で直した件数を数えます。直した件数が減っていけば、次の工程に広げる判断材料になります。

項目書く内容受注処理の例
対象業務自動化する業務の名前と範囲受注処理(FAXの取引先にはメールへの切り替えを依頼中)
今の年間時間記録した1件の時間×件数から出した年間の時間1日40件×8分で年約1,280時間
自動化する工程【AI】【RPA】を付けた工程注文メールの読み取り、受注システムへの入力、在庫の照会
人が残る工程と担当【人が確認】【人が判断】の工程と担当者50万円以上は上長が確認、在庫切れの納期相談は営業担当
試す範囲と期間最初に試す工程と期間読み取りと入力だけを1か月
判断に使う数字続けるか、広げるかを決める数字人の確認で直した件数、1件あたりの時間

効果をどの指標で測るかの設計は、「As-Is/To-Be分析のやり方」の記事で扱っています。稟議の段階では、導入前の数字と、試した後に見る数字の名前がそろっていれば十分です。

受注処理を図にするときは、受注から出荷までを描いたテンプレートを下敷きにすると早く進みます。製造業向けのテンプレートなので、商社なら生産・製造のレーンを外して営業と物流だけ残し、自社の工程に書き換えてから印を付けてみてください。無料プランでAIの下書きも試せます。

業務自動化でよくある5つの失敗と対策

自動化の失敗は、ツールや技術よりも「選び方」と「任せ方」の順番を飛ばしたところで起きます。5つの失敗のうち、2つは業務を選ぶ段階、3つは任せ方を決める段階のものです。

選び方の失敗

よくある失敗なぜ起きるか対策
ツールを先に決めて、使える業務を後から探す業務を選ぶ基準がない5つの基準で候補を比べてから、ツールを選ぶ
要らない作業を自動化したなくす・まとめるの見直しを飛ばした自動化の前に3つの問い(なくす・まとめる・入れ替える)を先に当てる

任せ方の失敗

よくある失敗なぜ起きるか対策
例外が多い業務を丸ごと自動化し、結局手作業に戻った工程の単位で分けていない例外の工程には【人が判断】の印を付け、自動化の範囲から外す
AIの読み取りミスが顧客に届いた。または全件確認で速くならなかった確認の場所と条件を決めていない3つの問いで確認を置く工程を選び、金額などの条件で絞る
作った人しか中身を知らず、止まったら誰も直せない手順と図が残っていない印を付けた図と手順を共有し、分かる人を2人以上にする

最後の失敗は、自動化の仕組みそのものが属人化した状態です。1人しか中身を知らない業務を減らす方法は、「属人化を解消するには?」の記事で扱っています。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

前に入れたRPA、画面が変わったら止まって、作った人も異動しちゃって……。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

それは技術の失敗というより、図と手順が残っていなかったのが原因だね。どの工程をロボットに任せているかが図にあれば、止まった所もすぐ分かるし、引き継ぎもできるよ。

まとめ|まず1つの業務を図にして、工程ごとに印を付ける

自動化は「業務を選ぶ → なくす・まとめるを先に → 工程ごとに印を付ける → 人の確認を条件で残す」の順で決めます。

この記事のまとめ

  • 候補の業務は、量・手順・入力・影響・続く期間の5つの基準で比べて選ぶ
  • 自動化の前に、なくせないか・まとめられないか・順番や担当を入れ替えられないかを問う
  • RPAは止まって気づける、AIはもっともらしく間違える。この差で確認の置き方が変わる
  • 工程に5つの印を付け、人の確認は社外に出る・取り消せない・説明が要る工程の手前に条件付きで残す

「どの業務を自動化するか」は業務の単位で、「どこまで任せるか」は工程の単位で決めます。前者は判定表で、後者は印を付けた業務フロー図で決まります。稟議には、その図と今の年間の作業時間、小さく試す範囲をそろえて出します。

まず判定表で上位に来た業務を1つ図にし、工程ごとに5つの印を付けるところから始めましょう。

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よくある質問

RPAとAIは、どちらから始めればよいですか?
業務の中身で決まります。入力が決まった画面や表で、手順が完全に決まっているならRPA、メールやPDFなど形のそろわない文章を読む工程があるならAIが向きます。1つの業務の中で両方を使うことも多く、受注処理なら注文メールを読むのはAI、受注システムへの入力はRPA、という組み合わせになります。
自動化に向かない業務はどんな業務ですか?
年に数回しかない業務、毎回やり方が違い判断が中心の業務(価格交渉や採用の見極めなど)、近く廃止や変更が決まっている業務の3つです。ただし「今は向かない」だけのこともあります。手順をそろえる、紙の入力をデータにする、といった準備をすれば候補に戻ってきます。
自動化する業務の優先順位はどう決めますか?
まず「なくせないか」を見て、残った業務を年間の作業時間(1件の時間×件数)の多い順に並べます。そのうえで手順・入力・影響・続く期間の4つで絞ります。間違えたときの影響が大きい業務は候補から外すのではなく、人の確認を残して自動化すると考えます。
AIに任せた工程は、人が全部チェックしないといけませんか?
全部である必要はありません。結果が社外に出る、取り消せない、判断の理由を説明する必要がある、のどれかに当てはまる工程の手前にだけ確認を置きます。見る項目と見比べる相手を決めた短い照合なら全件でも続けられますが、上長の承認のような重い確認は金額などの条件や抜き取りで絞ります。最初は確認の範囲を広めにとり、確認で直した件数を見ながら狭めていきます。
業務フロー図がなくても、自動化の検討はできますか?
業務の単位で「自動化するかどうか」を判定することはできます。ただ、どの工程をAIやRPAに任せ、どこに人の確認を残すかは、工程が見えていないと決められません。まず候補の業務を1つ図にしてください。候補の洗い出しから始める場合は、「業務棚卸のやり方」の記事で扱っています。

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