業務棚卸のやり方|棚卸表の作り方と、業務フロー図へつなぐ手順

「うちの業務、一度ぜんぶ洗い出しておいて」。社長にそう言われてExcelを開いたものの、何の列を作り、どこまで細かく書けばいいのか分からず手が止まっていませんか。
業務棚卸は、列を絞れば1人でも進められます。そして表を作ったあとに「どの行を、どう深掘りするか」まで決めておくと、棚卸しがそのまま改善の出発点になります。
この記事では、小さな会社でも回せる棚卸表の作り方と記入例、進め方の5ステップ、表の1行を業務フロー図に開く手順まで、架空の会社の例で順に説明します。
この記事でわかること
- 業務棚卸の目的と、業務フロー図・マニュアルとの違い
- 小さな会社でも回せる棚卸表の「基本の5列」と記入例
- 1人で進める業務棚卸の5ステップと、細かさの目安
- 棚卸表からフロー図にする業務の選び方と、1行を図に開く手順
業務棚卸とは?目的と3つの使い道
業務棚卸とは、会社や部署でしている仕事を一覧表に書き出し、誰が・どのくらいの頻度で・どれだけ時間を使っているかを見える形にすることです。
「業務の棚卸し」は仕事の在庫を数えること
倉庫の在庫を数える「棚卸し」になぞらえて、社内にある仕事を1つずつ数え上げるのが業務の棚卸しです。商品の数を数える在庫管理の棚卸しとは別のものなので、社内で話すときは「業務の棚卸し」と言い分けると混乱しません。
業務棚卸の3つの使い道
- 改善の出発点にする:どの仕事に年間何時間使っているかが分かり、手を付ける順番を決められます
- 引き継ぎや休みに備える:担当が1人だけの仕事が一覧で分かり、異動や退職の前に手を打てます
- 自動化やAIの使いどころを探す:「何に使えばいいか分からない」を決める手前の材料になります
棚卸表・業務フロー図・マニュアルの違い
| 道具 | 答える問い | 1つの単位 | 向いている場面 |
|---|---|---|---|
| 棚卸表 | 何の仕事が、どれだけあるか | 業務1つが1行 | 全体の量と担当をつかむ |
| 業務フロー図 | その仕事がどう流れるか | 工程と受け渡し | 待ちや差し戻しを見つける |
| マニュアル | 1つの工程をどうやるか | 作業の手順 | 人に任せる・教える |
使う順番は、棚卸表 → 業務フロー図 → マニュアルです。棚卸しは「業務改善の進め方」の記事で紹介している6ステップのうち、業務フローで現状を見える化する段階の一歩手前、「どの業務のフローを描くか」を決める作業にあたります。フロー図の描き方は「業務フローの作り方」、マニュアルは「業務マニュアルの作り方」の記事で扱っています。
ミナミさん
現場の業務改善担当
全部の仕事を書き出すなんて、それだけで何週間もかかりそうで…。正直、やる意味あるんでしょうか。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
最初から全部を完璧に書かなくていいんだ。目的は『どこに時間が使われているか』と『担当が1人しかいない仕事はどれか』を知ること。そのためなら、列は5つで足りるよ。
業務棚卸表の作り方|小さな会社は基本の5列から
1〜2人で棚卸しをするなら、列は「業務名・担当・頻度・1回の時間・次に渡す相手」の5つと、計算で出す「年間時間」から始めれば十分です。
基本の5列と、計算で出す1列
| 列名 | 書くこと | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 業務名 | 何をするかを動詞まで書く | 請求書を発行する |
| 担当 | 主にやっている人。1人しかいなければそれも分かるように書く | 事務B(1名) |
| 頻度 | 毎日・週1回・月1回・随時など | 月1回(月末) |
| 1回の時間 | 分で書く。本人に聞いたままの目安でよい | 720分(12時間) |
| 次に渡す相手 | 仕事を渡す人・部署・社外。複数なら順に書く | 営業 → 社長 → 顧客 |
| 年間時間(計算) | 1回の時間 × 年間の回数。Excelの式で出す | 144時間 |
この記事の表でいちばん大事なのが「次に渡す相手」の列です。この列があると、あとで1行を業務フロー図に開くとき、書いた相手の順番がそのまま工程と受け渡しの線になります。
Excelでそのまま使える列の並びと年間時間の式
Excelの1行目に、A列から順に「業務名/担当/頻度(年間回数)/1回の時間(分)/次に渡す相手/年間時間(時間)」と見出しを入れます。頻度の列には、毎日なら240(営業日)、週1回なら52、月1回なら12のように年間の回数を数字で入れておくと、式で計算できます。
年間時間のF2セルには「=C2*D2/60」と入れ、下の行へコピーします。たとえば1回45分の仕事を毎日(240回)しているなら、45×240÷60=180時間です。
余裕があれば足す列
| 列名 | 分かること |
|---|---|
| 副担当(代わりにできる人) | 担当が休んだときに仕事が止まるかどうか |
| 大・中・小分類 | 業務のまとまり。部署をまたいで比べやすくなる |
| 使う道具・書類 | システム名・Excel・紙など。自動化の候補探しに使う |
| 困っていること | 本人の一言。改善の手がかりになる |
| 改善の方向 | なくす・まとめる・入れ替える・簡単にする |
ベイズマネジメントの解説記事では、業務カテゴリ・大分類・中分類・小分類・主担当者・副担当者・発生頻度・1回の所要時間・年間工数・代替可否・改善アクションの11項目で作る例が紹介されています。1〜2人で回すなら、まず5列で1周し、2周目で必要な列を足すほうが最後まで進みます。
記入例:厨房機器の販売会社の総務・経理8業務
たとえば、社員12名の業務用厨房機器の販売会社(架空の例)で、事務Bが1人で総務・経理の業務を棚卸しした場合を考えます。事務はBとCの2名で、給与計算は社長が担当しています。
| 業務名 | 担当 | 頻度 | 1回の時間 | 次に渡す相手 | 年間時間 |
|---|---|---|---|---|---|
| 請求書を発行する | 事務B(1名) | 月1回(12回) | 12時間 | 営業(内容確認・差し戻しあり)→ 社長(承認)→ 顧客 | 144時間 |
| 受注を販売管理に入力する | 事務C(1名) | 毎日(240回) | 45分 | 倉庫 | 180時間 |
| 電話の一次受付をする | 全員で交代 | 毎日(240回) | 計60分 | 各担当 | 240時間 |
| 入金を確認して消し込む | 事務B(1名) | 週1回(52回) | 90分 | 社長(報告) | 78時間 |
| 給与を計算する | 社長(1名) | 月1回(12回) | 4時間 | 社会保険労務士 | 48時間 |
| 経費精算をチェックする | 事務B(1名) | 月1回(12回) | 3時間 | 社長(承認)→ 申請者(振込)。不備は申請者へ差し戻しあり | 36時間 |
| 週次の売上報告を作る | 営業D(1名) | 週1回(52回) | 30分 | 社長 | 26時間 |
| 備品を発注する | 事務C(1名) | 月2回(24回) | 30分 | 仕入先 | 12時間 |
記入例は読みやすいように頻度と時間を言葉で書いていますが、Excelでは式が動くように数字だけを入れます。「請求書を発行する」なら、頻度のC列に12、1回の時間のD列に720(分)です。
8業務の合計は年764時間です。年間時間で並べると、毎日の小さな仕事(電話の一次受付240時間、受注入力180時間)が、月1回の大仕事である請求書発行(144時間)より重いことが分かります。「大変そうに見える仕事」と「実際に時間を使っている仕事」がずれている、と気づけるのが棚卸しで最初に得られる発見です。
記入例の「請求書を発行する」の行は、次に渡す相手の列をたどると、そのまま仕事の流れになります。業務名と次に渡す相手を文章にしてAIに渡すと、業務フロー図の下書きができます。
業務棚卸のやり方5ステップ|1人でも回せる進め方
業務棚卸は「範囲と目的を決める → 自分で下書きする → 担当者に15分だけ聞く → 年間時間で並べる → フロー図にする業務を選ぶ」の5ステップで進めます。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 棚卸しを始める
- 範囲と目的を1文で決める
- 記録を見ながら自分で下書きする
- 担当者に15分ずつ聞いて直す
- 年間時間を出して並べ替える
- 3つの基準に当てはまる行がある?
- 当てはまる数が多い1行を選ぶ
- 範囲を広げて書き足す
- 選んだ業務をフロー図にする
流れ(矢印)
- 棚卸しを始める → 範囲と目的を1文で決める
- 範囲と目的を1文で決める → 記録を見ながら自分で下書きする
- 記録を見ながら自分で下書きする → 担当者に15分ずつ聞いて直す
- 担当者に15分ずつ聞いて直す → 年間時間を出して並べ替える
- 年間時間を出して並べ替える → 3つの基準に当てはまる行がある?
- 3つの基準に当てはまる行がある? →(はい)→ 当てはまる数が多い1行を選ぶ
- 3つの基準に当てはまる行がある? →(いいえ)→ 範囲を広げて書き足す
- 範囲を広げて書き足す → 記録を見ながら自分で下書きする
- 当てはまる数が多い1行を選ぶ → 選んだ業務をフロー図にする
ステップ1:範囲と目的を決める
最初に「総務・経理の業務」のように部署で範囲を区切ります。1回目は8〜20業務くらいに収まる範囲にすると、1人でも最後まで進められます。
目的も1文で決めておきます。たとえば「引き継ぎに備えて、担当が1人だけの仕事を見つける」「年間時間の大きい仕事から改善する」などです。目的が決まっていると、あとで足す列や選ぶ行に迷いません。
ステップ2:カレンダーと記録を見ながら自分で下書きする
記憶だけで書くと、毎日の仕事ばかりが並びます。予定表・送ったメール・請求書や伝票の控えなど、日付のある記録を1〜2か月分さかのぼって拾うと抜けにくくなります。とくに月末だけ、年に1回だけの仕事は漏れやすいので、月末と年度末の予定表は必ず見ます。
ステップ3:担当者に15分だけ聞いて直す
全員に白紙の表を配って書いてもらう方法は、忙しい小さな会社では途中で止まりがちです。自分で作った下書きを見せて「違うところと、抜けている仕事だけ教えてください」と聞く形にすると、1人15分ほどで済みます。聞く質問は次の3つに絞ります。
- 月末・年末・決算期だけにしている仕事はありますか?
- あなたが1週間休んだら止まる仕事はどれですか?
- その仕事は誰から受け取り、誰に渡していますか?途中で戻ってくることはありますか?
3つ目の質問の答えが、そのまま「次に渡す相手」の列になります。「戻ってくる」と答えた仕事は、相手の横に「差し戻しあり」とメモしておくと、あとで図にする行を選ぶときに使えます。たとえば記入例の会社では、事務Bが半日で下書きを作った時点では6業務しかありませんでした。社長・事務C・営業Dに15分ずつ(合計45分)聞いたところ、「経費精算をチェックする」と「備品を発注する」が加わり、8業務になりました。
ステップ4:年間時間を出して並べ替える
全行の年間時間を式で出したら、年間時間の大きい順に並べ替えます。同時に、担当の列で「1名」と書いた行に色を付けておくと、次のステップで選ぶときに一目で分かります。記入例では、上位3行(240時間・180時間・144時間)だけで合計564時間となり、8業務全体の7割を超えていました。
ステップ5:フロー図にする業務を選ぶ
並べ替えた表から、業務フロー図にする1行を選びます。選び方の3つの基準は、この後の節で記入例に当てはめて説明します。どの行も基準に当てはまらないときは、範囲を隣の部署まで広げて書き足します。ここで表だけ作って終わらせず、「1行を図にする」まで予定に入れておくことが、棚卸しを改善につなげるコツです。
ミナミさん
現場の業務改善担当
みんな忙しくて、表を配っても返ってこないと思います…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
だから先に自分で下書きして、本人には『違うところだけ教えて』と頼むんだ。白紙の表を埋めてもらうより、ずっと答えやすい。1人15分なら、忙しい人も時間をくれるよ。
なお「ECRS(イクルス)とは?」の記事では、ECRSを当てはめる手順の1番目に「業務の棚卸しと見える化」を置いています。ここで紹介した5ステップは、その1番目を表の段階まで細かく分けたものです。
どこまで細かく書く?粒度を決める3つの目安
1行は「その仕事だけを、別の人にそのまま頼める大きさ」を目安にします。これより粗いと時間や担当が書けず、細かいと行が増えすぎて棚卸しが止まります。
目安1:別の人に引き継げる単位で切る
ベイズマネジメントの解説記事でも、いちばん細かい分類は「誰かに引き継げる単位」まで分けるのが目安とされています。たとえば「採用業務」では粗すぎて誰にも頼めませんが、「応募者の面接日程を調整する」なら、明日から別の人に任せられます。
目安2:「〜対応」「〜関係」を使わず、動詞で書く
「取引先対応」「経理関係」のような書き方は、何をしているのかが人によって違って読めます。「取引先からの見積依頼に回答する」「入金を確認して消し込む」のように、動詞まで書くと1行の範囲が決まり、1回の時間も答えやすくなります。
目安3:大・中・小の3段で束ねる
業務が20行を超えてきたら、分類で束ねると見やすくなります。Teachme Bizの解説記事では、大分類を会社の中で共通して行う業務、中分類を部門・部署で共通する業務、小分類を個人単位の作業、と分ける考え方が紹介されています。棚卸表の1行は小分類にあたります。
この記事での目安として、1回5分もかからない細かい作業は独立した行にせず、それを含む上の行にまとめます。たとえば「請求書の宛名を印刷する」は、「請求書を発行する」の行に含めれば十分です。
| 状態 | 書き方の例 | 困ること |
|---|---|---|
| 粗すぎる | 経理業務 | 担当・頻度・時間が1つに決まらず、書けない |
| 細かすぎる | 請求書の宛名を印刷する | 行が数百になり、途中で止まる |
| ちょうどよい | 請求書を発行する | 担当・頻度・時間が1つに決まる |
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 大分類:経理
- 中分類:売上の管理
- 小分類:請求書を発行する
- フロー図:請求書発行の流れ
- 工程:営業が内容を確認する
- 下の階層:確認の手順と差し戻しの基準
流れ(矢印)
- 大分類:経理 → 中分類:売上の管理
- 中分類:売上の管理 → 小分類:請求書を発行する
- 小分類:請求書を発行する → フロー図:請求書発行の流れ
- フロー図:請求書発行の流れ → 工程:営業が内容を確認する
- 工程:営業が内容を確認する → 下の階層:確認の手順と差し戻しの基準
小分類より細かい手順は、表ではなく業務フロー図の中で書きます。DrillSparkでは図の中の工程に下の階層(サブプロセス)を作ってドリルダウンできるので、「表の1行 → 1枚の図 → 工程ごとの細かい手順」と、棚卸表の段と図の段をそろえて整理できます。
ミナミさん
現場の業務改善担当
細かく書くほど正確になる気がして、1業務を20行に分けたら終わらなくなりました…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
表は『どの仕事に時間がかかっているか』が分かれば役目を果たすんだ。細かい手順は、選んだ業務だけフロー図とマニュアルで書けばいい。表は粗め、図で細かく、が続けるコツだよ。
棚卸表からフロー図にする業務を選ぶ3つの基準
「年間時間が大きい」「担当が1人だけ」「渡す相手が2者以上か、差し戻しがある」の3つに多く当てはまる行から、業務フロー図にします。全部の行を図にする必要はなく、1枚目は1行で十分です。
基準1:年間時間が大きい
年間時間が大きい仕事ほど、改善したときの効き目が大きくなります。年180時間の仕事を1割短くすれば年18時間、年12時間の仕事なら1.2時間です。同じ手間をかけるなら、上位の行から手を付けます。
基準2:担当が1人だけ
担当が1人だけの仕事は、その人が休んだり辞めたりすると止まるおそれがあります。ただし5列の表が記録しているのは「誰がやっているか」だけで、「代わりにできる人がいない」かどうかは、副担当の列を足して初めて分かります。担当が1人に偏った仕事への対策は「属人化を解消するには?」の記事で扱っています。
基準3:渡す相手が2者以上か、差し戻しがある
次に渡す相手が2者以上いる仕事や、途中で差し戻しが起きる仕事は、受け渡しの間に待ちが生まれやすくなります。こうした待ちや手戻りは表の1行からは見えず、図にしたときに初めて見つかるため、フロー図にする価値がいちばん高い行です。差し戻しの有無は、ステップ3の3つ目の質問で「次に渡す相手」の列にメモしたものを使います。
記入例の8業務に当てはめた結果
| 業務名 | 年間時間が上位3位以内 | 担当1名 | 渡す相手2者以上・差し戻し | 当てはまる数 |
|---|---|---|---|---|
| 請求書を発行する | ○(144時間・3位) | ○ | ○(営業・社長・顧客、誤りの差し戻しあり) | 3 |
| 受注を販売管理に入力する | ○(180時間・2位) | ○ | ― | 2 |
| 経費精算をチェックする | ― | ○ | ○(社長・申請者、不備の差し戻しあり) | 2 |
| 入金を確認して消し込む | ― | ○ | ― | 1 |
| 電話の一次受付をする | ○(240時間・1位) | ― | ― | 1 |
| 給与を計算する | ― | ○(社長) | ― | 1 |
| 週次の売上報告を作る | ― | ○ | ― | 1 |
| 備品を発注する | ― | ○ | ― | 1 |
この会社では8業務のうち7業務を1人で担当していました。3つの基準すべてに当てはまるのは「請求書を発行する」だけなので、1枚目はこの業務にします。2枚目の候補は、当てはまる数が2の「受注を販売管理に入力する」か「経費精算をチェックする」です。
年間時間がいちばん大きい電話の一次受付は、全員で分担していて流れも単純です。図にするより「電話の件数を減らせないか」「自動化できないか」を考える業務で、その判断のしかたは「自動化する業務の選び方」の記事で扱っています。
棚卸表の1行を業務フロー図に開く4ステップ|請求書発行の例
選んだ行の「次に渡す相手」を工程の順に並べ、分岐と差し戻し、工程ごとの時間を書き足せば、1行が1枚の業務フロー図になります。記入例の「請求書を発行する」(年144時間、1回12時間)で順に見ていきます。
ステップ1:「次に渡す相手」を順に並べて骨組みにする
表の「営業(内容確認・差し戻しあり)→ 社長(承認)→ 顧客」に、仕事を始める人と作る人を足して並べると、「営業 → 事務 → 営業 → 社長 → 顧客」という骨組みができます。それぞれの間に「何をして渡すのか」を動詞で書けば、工程の箱になります。
ステップ2:「うまくいかないときは?」と聞いて分岐と差し戻しを足す
骨組みができたら、担当者に「この途中でうまくいかないことはありますか」と聞きます。記入例の会社では、営業の確認で金額や宛先の誤りが見つかると事務へ差し戻され、作り直していました。月に何社で起きるかも聞くと、請求先40社のうち平均6社でした。送り方も、郵送とメールの2通りに分かれていました。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 月末の締め
- 営業が納品内容を事務に共有する
- 事務が販売管理ソフトで請求書を作る
- 営業が内容を確認する
- 金額や宛先に誤りがある?
- 事務が直して作り直す
- 社長が金額を承認する
- 送付方法は?
- 印刷して封入し郵送する
- PDFをメールで送る
- 請求完了
流れ(矢印)
- 月末の締め → 営業が納品内容を事務に共有する
- 営業が納品内容を事務に共有する → 事務が販売管理ソフトで請求書を作る
- 事務が販売管理ソフトで請求書を作る → 営業が内容を確認する
- 営業が内容を確認する → 金額や宛先に誤りがある?
- 金額や宛先に誤りがある? →(はい)→ 事務が直して作り直す
- 事務が直して作り直す → 営業が内容を確認する
- 金額や宛先に誤りがある? →(いいえ)→ 社長が金額を承認する
- 社長が金額を承認する → 送付方法は?
- 送付方法は? →(郵送)→ 印刷して封入し郵送する
- 送付方法は? →(メール)→ PDFをメールで送る
- 印刷して封入し郵送する → 請求完了
- PDFをメールで送る → 請求完了
ステップ3:工程ごとの作業時間と待ち時間を書き込む
表に書いた「1回12時間」を、どの工程が使っているかに分けて聞きます。あわせて、次の人が手を付けるまでの待ち時間も聞いておきます。
| 工程 | 担当 | 作業時間 | 待ち |
|---|---|---|---|
| 納品内容を集めて請求書を作る | 事務B | 6時間 | ― |
| 営業の確認を受ける | 事務B・営業 | 1時間 | 営業の外出で平均2日 |
| 差し戻しを直して作り直す(月6社×30分) | 事務B | 3時間 | ― |
| 社長の承認を受ける | 事務B | 30分 | 1日 |
| 印刷・封入・郵送、メール送付 | 事務B | 1時間30分 | ― |
| 合計 | 12時間 | 約3日 |
12時間のうち3時間、つまり4分の1が差し戻しの作り直しに使われていました。表では「請求書を発行する12時間」という1行だった仕事の中身が、図にして初めて見えたことになります。
ステップ4:図から次の一手を決める
図で見つかったことごとに、次に使う手法が変わります。ここから先の進め方は、それぞれの手法を扱った記事で詳しく説明しています。
| 図で見えたこと | 次の一手 | 詳しく扱う記事 |
|---|---|---|
| 差し戻しの作り直しが月3時間 | なぜ誤りが出るのかを掘り下げる | なぜなぜ分析のやり方 |
| 営業の確認待ちが平均2日 | 待ちや転記のムダを探す | 事務の7つのムダとは? |
| 確認と承認の順番や、そもそも両方必要か | なくす・まとめるを先に考える | ECRS(イクルス)とは? |
| 改善したあとの流れ | 改善後の図を描いて今と比べる | As-Is/To-Be分析のやり方 |
ミナミさん
現場の業務改善担当
表では『請求書発行12時間』としか見えなかったのに、図にしたら差し戻しで3時間も使っていたんですね。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
そう、表は『どこを見るか』を教えてくれて、図は『なぜ時間がかかるか』を教えてくれるんだ。だから棚卸しは表で終わらせず、1行だけでも図にするところまでやろう。
業務棚卸でよくある4つの失敗と対策
業務棚卸がうまくいかない原因の多くは、「表を作って終わる」「細かすぎて止まる」「本人に聞かない」「一度きりで更新しない」の4つです。
| 失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| 表を作って満足する | 一覧はできたが、何も変わらない | 最初から「3つの基準で1行選び、図にする」までを予定に入れる |
| 細かくしすぎて終わらない | 行が数百になり、途中で止まる | 1行は別の人に頼める大きさ。1周目は5列だけ |
| 担当者に聞かずに書く | 月末・年1回の仕事や受け渡しが抜ける | 下書きを見せて1人15分、3つの質問で直す |
| 一度作って更新しない | 異動やシステム変更で表が古くなる | 見直す時期を決め、人やシステムが変わったときも直す |
失敗1:表を作って満足する
棚卸表ができると、仕事が一覧になっただけで達成感があります。しかし表は「どこを見るか」を教えてくれるだけで、時間がかかる理由までは教えてくれません。棚卸しを始める時点で「表の完成から1週間以内に、1行を業務フロー図にする」のように、図にするところまで日付を決めておきます。
失敗2:細かくしすぎて終わらない
正確にしようとするほど行が増え、20業務のつもりが200行になって止まる、ということが起きます。1行は「別の人にそのまま頼める大きさ」にそろえ、1周目は基本の5列だけで埋めきることを優先します。細かい手順は、選んだ業務だけ図の中で書けば足ります。
失敗3:担当者に聞かずに書く
自分の目に見えている仕事だけで表を作ると、月末や年1回の仕事、他の人との受け渡しが抜けます。記入例でも、下書きの6業務にヒアリングで2業務が加わりました。「あなたが1週間休んだら止まる仕事は?」の質問は、担当が1人だけの仕事を見つけるのにも役立ちます。
失敗4:一度作って更新しない
業務は人の異動や新しいシステムの導入で変わります。四半期ごとや年度替わりなど、見直す時期をあらかじめ決めておきます。加えて、担当者が変わるとき、ソフトを入れ替えるときにも、その部分の行だけ直しておくと、表が古くなりません。
まとめ|棚卸表を作ったら、まず1行を業務フロー図にする
業務棚卸は、「5列の表で仕事の量をつかみ、3つの基準で選んだ1行を図にする」ところまでが1セットです。
この記事のまとめ
- 棚卸表は「業務名・担当・頻度・1回の時間・次に渡す相手」の5列と、計算で出す年間時間から始める
- 自分で下書きし、担当者には1人15分だけ聞いて直す
- 1行の細かさは「別の人にそのまま頼める大きさ」
- 「年間時間が大きい」「担当が1人だけ」「渡す相手が2者以上か、差し戻しがある」の3つの基準で、図にする行を選ぶ
- 選んだ1行は、次に渡す相手をたどると業務フロー図になる
棚卸表は、会社の仕事の地図のようなものです。地図で目的地を決めたら、次はその場所を詳しく見る番で、それが業務フロー図です。表の1行を図に開くと、待ちや差し戻しのように表では見えなかった時間が見えてきます。
DrillSparkでは、業務の流れを日本語で説明するとAIがフローチャートの下書きを作り、対話しながら直せます。無料プランがあり、クレジットカードは不要です。
まずは、棚卸表でいちばん当てはまる数が多かった1行を選び、その業務を1枚の図にするところから始めてみてください。
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