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業務棚卸のやり方|棚卸表の作り方と、業務フロー図へつなぐ手順

公開日 約13分で読めます
ノートにチェックリストを書き出す手元

「うちの業務、一度ぜんぶ洗い出しておいて」。社長にそう言われてExcelを開いたものの、何の列を作り、どこまで細かく書けばいいのか分からず手が止まっていませんか。

業務棚卸は、列を絞れば1人でも進められます。そして表を作ったあとに「どの行を、どう深掘りするか」まで決めておくと、棚卸しがそのまま改善の出発点になります。

この記事では、小さな会社でも回せる棚卸表の作り方と記入例、進め方の5ステップ、表の1行を業務フロー図に開く手順まで、架空の会社の例で順に説明します。

この記事でわかること

  • 業務棚卸の目的と、業務フロー図・マニュアルとの違い
  • 小さな会社でも回せる棚卸表の「基本の5列」と記入例
  • 1人で進める業務棚卸の5ステップと、細かさの目安
  • 棚卸表からフロー図にする業務の選び方と、1行を図に開く手順

業務棚卸とは?目的と3つの使い道

業務棚卸とは、会社や部署でしている仕事を一覧表に書き出し、誰が・どのくらいの頻度で・どれだけ時間を使っているかを見える形にすることです。

「業務の棚卸し」は仕事の在庫を数えること

倉庫の在庫を数える「棚卸し」になぞらえて、社内にある仕事を1つずつ数え上げるのが業務の棚卸しです。商品の数を数える在庫管理の棚卸しとは別のものなので、社内で話すときは「業務の棚卸し」と言い分けると混乱しません。

業務棚卸の3つの使い道

  • 改善の出発点にする:どの仕事に年間何時間使っているかが分かり、手を付ける順番を決められます
  • 引き継ぎや休みに備える:担当が1人だけの仕事が一覧で分かり、異動や退職の前に手を打てます
  • 自動化やAIの使いどころを探す:「何に使えばいいか分からない」を決める手前の材料になります

棚卸表・業務フロー図・マニュアルの違い

道具答える問い1つの単位向いている場面
棚卸表何の仕事が、どれだけあるか業務1つが1行全体の量と担当をつかむ
業務フロー図その仕事がどう流れるか工程と受け渡し待ちや差し戻しを見つける
マニュアル1つの工程をどうやるか作業の手順人に任せる・教える

使う順番は、棚卸表 → 業務フロー図 → マニュアルです。棚卸しは「業務改善の進め方」の記事で紹介している6ステップのうち、業務フローで現状を見える化する段階の一歩手前、「どの業務のフローを描くか」を決める作業にあたります。フロー図の描き方は「業務フローの作り方」、マニュアルは「業務マニュアルの作り方」の記事で扱っています。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

全部の仕事を書き出すなんて、それだけで何週間もかかりそうで…。正直、やる意味あるんでしょうか。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

最初から全部を完璧に書かなくていいんだ。目的は『どこに時間が使われているか』と『担当が1人しかいない仕事はどれか』を知ること。そのためなら、列は5つで足りるよ。

業務棚卸表の作り方|小さな会社は基本の5列から

1〜2人で棚卸しをするなら、列は「業務名・担当・頻度・1回の時間・次に渡す相手」の5つと、計算で出す「年間時間」から始めれば十分です。

基本の5列と、計算で出す1列

列名書くこと書き方の例
業務名何をするかを動詞まで書く請求書を発行する
担当主にやっている人。1人しかいなければそれも分かるように書く事務B(1名)
頻度毎日・週1回・月1回・随時など月1回(月末)
1回の時間分で書く。本人に聞いたままの目安でよい720分(12時間)
次に渡す相手仕事を渡す人・部署・社外。複数なら順に書く営業 → 社長 → 顧客
年間時間(計算)1回の時間 × 年間の回数。Excelの式で出す144時間

この記事の表でいちばん大事なのが「次に渡す相手」の列です。この列があると、あとで1行を業務フロー図に開くとき、書いた相手の順番がそのまま工程と受け渡しの線になります。

Excelでそのまま使える列の並びと年間時間の式

Excelの1行目に、A列から順に「業務名/担当/頻度(年間回数)/1回の時間(分)/次に渡す相手/年間時間(時間)」と見出しを入れます。頻度の列には、毎日なら240(営業日)、週1回なら52、月1回なら12のように年間の回数を数字で入れておくと、式で計算できます。

年間時間のF2セルには「=C2*D2/60」と入れ、下の行へコピーします。たとえば1回45分の仕事を毎日(240回)しているなら、45×240÷60=180時間です。

余裕があれば足す列

列名分かること
副担当(代わりにできる人)担当が休んだときに仕事が止まるかどうか
大・中・小分類業務のまとまり。部署をまたいで比べやすくなる
使う道具・書類システム名・Excel・紙など。自動化の候補探しに使う
困っていること本人の一言。改善の手がかりになる
改善の方向なくす・まとめる・入れ替える・簡単にする

ベイズマネジメントの解説記事では、業務カテゴリ・大分類・中分類・小分類・主担当者・副担当者・発生頻度・1回の所要時間・年間工数・代替可否・改善アクションの11項目で作る例が紹介されています。1〜2人で回すなら、まず5列で1周し、2周目で必要な列を足すほうが最後まで進みます。

記入例:厨房機器の販売会社の総務・経理8業務

たとえば、社員12名の業務用厨房機器の販売会社(架空の例)で、事務Bが1人で総務・経理の業務を棚卸しした場合を考えます。事務はBとCの2名で、給与計算は社長が担当しています。

業務名担当頻度1回の時間次に渡す相手年間時間
請求書を発行する事務B(1名)月1回(12回)12時間営業(内容確認・差し戻しあり)→ 社長(承認)→ 顧客144時間
受注を販売管理に入力する事務C(1名)毎日(240回)45分倉庫180時間
電話の一次受付をする全員で交代毎日(240回)計60分各担当240時間
入金を確認して消し込む事務B(1名)週1回(52回)90分社長(報告)78時間
給与を計算する社長(1名)月1回(12回)4時間社会保険労務士48時間
経費精算をチェックする事務B(1名)月1回(12回)3時間社長(承認)→ 申請者(振込)。不備は申請者へ差し戻しあり36時間
週次の売上報告を作る営業D(1名)週1回(52回)30分社長26時間
備品を発注する事務C(1名)月2回(24回)30分仕入先12時間

記入例は読みやすいように頻度と時間を言葉で書いていますが、Excelでは式が動くように数字だけを入れます。「請求書を発行する」なら、頻度のC列に12、1回の時間のD列に720(分)です。

8業務の合計は年764時間です。年間時間で並べると、毎日の小さな仕事(電話の一次受付240時間、受注入力180時間)が、月1回の大仕事である請求書発行(144時間)より重いことが分かります。「大変そうに見える仕事」と「実際に時間を使っている仕事」がずれている、と気づけるのが棚卸しで最初に得られる発見です。

記入例の「請求書を発行する」の行は、次に渡す相手の列をたどると、そのまま仕事の流れになります。業務名と次に渡す相手を文章にしてAIに渡すと、業務フロー図の下書きができます。

業務棚卸のやり方5ステップ|1人でも回せる進め方

業務棚卸は「範囲と目的を決める → 自分で下書きする → 担当者に15分だけ聞く → 年間時間で並べる → フロー図にする業務を選ぶ」の5ステップで進めます。

図1:業務棚卸の5ステップ。最後は表で終わらず、1つの業務をフロー図にする
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 棚卸しを始める
  2. 範囲と目的を1文で決める
  3. 記録を見ながら自分で下書きする
  4. 担当者に15分ずつ聞いて直す
  5. 年間時間を出して並べ替える
  6. 3つの基準に当てはまる行がある?
  7. 当てはまる数が多い1行を選ぶ
  8. 範囲を広げて書き足す
  9. 選んだ業務をフロー図にする

流れ(矢印)

  • 棚卸しを始める → 範囲と目的を1文で決める
  • 範囲と目的を1文で決める → 記録を見ながら自分で下書きする
  • 記録を見ながら自分で下書きする → 担当者に15分ずつ聞いて直す
  • 担当者に15分ずつ聞いて直す → 年間時間を出して並べ替える
  • 年間時間を出して並べ替える → 3つの基準に当てはまる行がある?
  • 3つの基準に当てはまる行がある? →(はい)→ 当てはまる数が多い1行を選ぶ
  • 3つの基準に当てはまる行がある? →(いいえ)→ 範囲を広げて書き足す
  • 範囲を広げて書き足す → 記録を見ながら自分で下書きする
  • 当てはまる数が多い1行を選ぶ → 選んだ業務をフロー図にする

ステップ1:範囲と目的を決める

最初に「総務・経理の業務」のように部署で範囲を区切ります。1回目は8〜20業務くらいに収まる範囲にすると、1人でも最後まで進められます。

目的も1文で決めておきます。たとえば「引き継ぎに備えて、担当が1人だけの仕事を見つける」「年間時間の大きい仕事から改善する」などです。目的が決まっていると、あとで足す列や選ぶ行に迷いません。

ステップ2:カレンダーと記録を見ながら自分で下書きする

記憶だけで書くと、毎日の仕事ばかりが並びます。予定表・送ったメール・請求書や伝票の控えなど、日付のある記録を1〜2か月分さかのぼって拾うと抜けにくくなります。とくに月末だけ、年に1回だけの仕事は漏れやすいので、月末と年度末の予定表は必ず見ます。

ステップ3:担当者に15分だけ聞いて直す

全員に白紙の表を配って書いてもらう方法は、忙しい小さな会社では途中で止まりがちです。自分で作った下書きを見せて「違うところと、抜けている仕事だけ教えてください」と聞く形にすると、1人15分ほどで済みます。聞く質問は次の3つに絞ります。

  1. 月末・年末・決算期だけにしている仕事はありますか?
  2. あなたが1週間休んだら止まる仕事はどれですか?
  3. その仕事は誰から受け取り、誰に渡していますか?途中で戻ってくることはありますか?

3つ目の質問の答えが、そのまま「次に渡す相手」の列になります。「戻ってくる」と答えた仕事は、相手の横に「差し戻しあり」とメモしておくと、あとで図にする行を選ぶときに使えます。たとえば記入例の会社では、事務Bが半日で下書きを作った時点では6業務しかありませんでした。社長・事務C・営業Dに15分ずつ(合計45分)聞いたところ、「経費精算をチェックする」と「備品を発注する」が加わり、8業務になりました。

ステップ4:年間時間を出して並べ替える

全行の年間時間を式で出したら、年間時間の大きい順に並べ替えます。同時に、担当の列で「1名」と書いた行に色を付けておくと、次のステップで選ぶときに一目で分かります。記入例では、上位3行(240時間・180時間・144時間)だけで合計564時間となり、8業務全体の7割を超えていました。

ステップ5:フロー図にする業務を選ぶ

並べ替えた表から、業務フロー図にする1行を選びます。選び方の3つの基準は、この後の節で記入例に当てはめて説明します。どの行も基準に当てはまらないときは、範囲を隣の部署まで広げて書き足します。ここで表だけ作って終わらせず、「1行を図にする」まで予定に入れておくことが、棚卸しを改善につなげるコツです。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

みんな忙しくて、表を配っても返ってこないと思います…。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

だから先に自分で下書きして、本人には『違うところだけ教えて』と頼むんだ。白紙の表を埋めてもらうより、ずっと答えやすい。1人15分なら、忙しい人も時間をくれるよ。

なお「ECRS(イクルス)とは?」の記事では、ECRSを当てはめる手順の1番目に「業務の棚卸しと見える化」を置いています。ここで紹介した5ステップは、その1番目を表の段階まで細かく分けたものです。

どこまで細かく書く?粒度を決める3つの目安

1行は「その仕事だけを、別の人にそのまま頼める大きさ」を目安にします。これより粗いと時間や担当が書けず、細かいと行が増えすぎて棚卸しが止まります。

目安1:別の人に引き継げる単位で切る

ベイズマネジメントの解説記事でも、いちばん細かい分類は「誰かに引き継げる単位」まで分けるのが目安とされています。たとえば「採用業務」では粗すぎて誰にも頼めませんが、「応募者の面接日程を調整する」なら、明日から別の人に任せられます。

目安2:「〜対応」「〜関係」を使わず、動詞で書く

「取引先対応」「経理関係」のような書き方は、何をしているのかが人によって違って読めます。「取引先からの見積依頼に回答する」「入金を確認して消し込む」のように、動詞まで書くと1行の範囲が決まり、1回の時間も答えやすくなります。

目安3:大・中・小の3段で束ねる

業務が20行を超えてきたら、分類で束ねると見やすくなります。Teachme Bizの解説記事では、大分類を会社の中で共通して行う業務、中分類を部門・部署で共通する業務、小分類を個人単位の作業、と分ける考え方が紹介されています。棚卸表の1行は小分類にあたります。

この記事での目安として、1回5分もかからない細かい作業は独立した行にせず、それを含む上の行にまとめます。たとえば「請求書の宛名を印刷する」は、「請求書を発行する」の行に含めれば十分です。

状態書き方の例困ること
粗すぎる経理業務担当・頻度・時間が1つに決まらず、書けない
細かすぎる請求書の宛名を印刷する行が数百になり、途中で止まる
ちょうどよい請求書を発行する担当・頻度・時間が1つに決まる
図2:棚卸表の大・中・小分類と、業務フロー図の工程・下の階層の関係。表は小分類まで、それより細かい手順は図の中で書く
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 大分類:経理
  2. 中分類:売上の管理
  3. 小分類:請求書を発行する
  4. フロー図:請求書発行の流れ
  5. 工程:営業が内容を確認する
  6. 下の階層:確認の手順と差し戻しの基準

流れ(矢印)

  • 大分類:経理 → 中分類:売上の管理
  • 中分類:売上の管理 → 小分類:請求書を発行する
  • 小分類:請求書を発行する → フロー図:請求書発行の流れ
  • フロー図:請求書発行の流れ → 工程:営業が内容を確認する
  • 工程:営業が内容を確認する → 下の階層:確認の手順と差し戻しの基準

小分類より細かい手順は、表ではなく業務フロー図の中で書きます。DrillSparkでは図の中の工程に下の階層(サブプロセス)を作ってドリルダウンできるので、「表の1行 → 1枚の図 → 工程ごとの細かい手順」と、棚卸表の段と図の段をそろえて整理できます。

現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

細かく書くほど正確になる気がして、1業務を20行に分けたら終わらなくなりました…。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

表は『どの仕事に時間がかかっているか』が分かれば役目を果たすんだ。細かい手順は、選んだ業務だけフロー図とマニュアルで書けばいい。表は粗め、図で細かく、が続けるコツだよ。

棚卸表からフロー図にする業務を選ぶ3つの基準

「年間時間が大きい」「担当が1人だけ」「渡す相手が2者以上か、差し戻しがある」の3つに多く当てはまる行から、業務フロー図にします。全部の行を図にする必要はなく、1枚目は1行で十分です。

基準1:年間時間が大きい

年間時間が大きい仕事ほど、改善したときの効き目が大きくなります。年180時間の仕事を1割短くすれば年18時間、年12時間の仕事なら1.2時間です。同じ手間をかけるなら、上位の行から手を付けます。

基準2:担当が1人だけ

担当が1人だけの仕事は、その人が休んだり辞めたりすると止まるおそれがあります。ただし5列の表が記録しているのは「誰がやっているか」だけで、「代わりにできる人がいない」かどうかは、副担当の列を足して初めて分かります。担当が1人に偏った仕事への対策は「属人化を解消するには?」の記事で扱っています。

基準3:渡す相手が2者以上か、差し戻しがある

次に渡す相手が2者以上いる仕事や、途中で差し戻しが起きる仕事は、受け渡しの間に待ちが生まれやすくなります。こうした待ちや手戻りは表の1行からは見えず、図にしたときに初めて見つかるため、フロー図にする価値がいちばん高い行です。差し戻しの有無は、ステップ3の3つ目の質問で「次に渡す相手」の列にメモしたものを使います。

記入例の8業務に当てはめた結果

業務名年間時間が上位3位以内担当1名渡す相手2者以上・差し戻し当てはまる数
請求書を発行する○(144時間・3位)○○(営業・社長・顧客、誤りの差し戻しあり)3
受注を販売管理に入力する○(180時間・2位)○―2
経費精算をチェックする―○○(社長・申請者、不備の差し戻しあり)2
入金を確認して消し込む―○―1
電話の一次受付をする○(240時間・1位)――1
給与を計算する―○(社長)―1
週次の売上報告を作る―○―1
備品を発注する―○―1

この会社では8業務のうち7業務を1人で担当していました。3つの基準すべてに当てはまるのは「請求書を発行する」だけなので、1枚目はこの業務にします。2枚目の候補は、当てはまる数が2の「受注を販売管理に入力する」か「経費精算をチェックする」です。

年間時間がいちばん大きい電話の一次受付は、全員で分担していて流れも単純です。図にするより「電話の件数を減らせないか」「自動化できないか」を考える業務で、その判断のしかたは「自動化する業務の選び方」の記事で扱っています。

1枚目は、3つの基準すべてに当てはまる業務から。改善の成果が見えやすく、次の業務に進むときの説得材料になります。

棚卸表の1行を業務フロー図に開く4ステップ|請求書発行の例

選んだ行の「次に渡す相手」を工程の順に並べ、分岐と差し戻し、工程ごとの時間を書き足せば、1行が1枚の業務フロー図になります。記入例の「請求書を発行する」(年144時間、1回12時間)で順に見ていきます。

ステップ1:「次に渡す相手」を順に並べて骨組みにする

表の「営業(内容確認・差し戻しあり)→ 社長(承認)→ 顧客」に、仕事を始める人と作る人を足して並べると、「営業 → 事務 → 営業 → 社長 → 顧客」という骨組みができます。それぞれの間に「何をして渡すのか」を動詞で書けば、工程の箱になります。

ステップ2:「うまくいかないときは?」と聞いて分岐と差し戻しを足す

骨組みができたら、担当者に「この途中でうまくいかないことはありますか」と聞きます。記入例の会社では、営業の確認で金額や宛先の誤りが見つかると事務へ差し戻され、作り直していました。月に何社で起きるかも聞くと、請求先40社のうち平均6社でした。送り方も、郵送とメールの2通りに分かれていました。

図3:棚卸表の「請求書を発行する」の1行を開いた業務フロー図。次に渡す相手の列が、そのまま工程の順番になる
図の内容(テキスト)

図に出てくる項目

  1. 月末の締め
  2. 営業が納品内容を事務に共有する
  3. 事務が販売管理ソフトで請求書を作る
  4. 営業が内容を確認する
  5. 金額や宛先に誤りがある?
  6. 事務が直して作り直す
  7. 社長が金額を承認する
  8. 送付方法は?
  9. 印刷して封入し郵送する
  10. PDFをメールで送る
  11. 請求完了

流れ(矢印)

  • 月末の締め → 営業が納品内容を事務に共有する
  • 営業が納品内容を事務に共有する → 事務が販売管理ソフトで請求書を作る
  • 事務が販売管理ソフトで請求書を作る → 営業が内容を確認する
  • 営業が内容を確認する → 金額や宛先に誤りがある?
  • 金額や宛先に誤りがある? →(はい)→ 事務が直して作り直す
  • 事務が直して作り直す → 営業が内容を確認する
  • 金額や宛先に誤りがある? →(いいえ)→ 社長が金額を承認する
  • 社長が金額を承認する → 送付方法は?
  • 送付方法は? →(郵送)→ 印刷して封入し郵送する
  • 送付方法は? →(メール)→ PDFをメールで送る
  • 印刷して封入し郵送する → 請求完了
  • PDFをメールで送る → 請求完了

ステップ3:工程ごとの作業時間と待ち時間を書き込む

表に書いた「1回12時間」を、どの工程が使っているかに分けて聞きます。あわせて、次の人が手を付けるまでの待ち時間も聞いておきます。

工程担当作業時間待ち
納品内容を集めて請求書を作る事務B6時間―
営業の確認を受ける事務B・営業1時間営業の外出で平均2日
差し戻しを直して作り直す(月6社×30分)事務B3時間―
社長の承認を受ける事務B30分1日
印刷・封入・郵送、メール送付事務B1時間30分―
合計12時間約3日

12時間のうち3時間、つまり4分の1が差し戻しの作り直しに使われていました。表では「請求書を発行する12時間」という1行だった仕事の中身が、図にして初めて見えたことになります。

ステップ4:図から次の一手を決める

図で見つかったことごとに、次に使う手法が変わります。ここから先の進め方は、それぞれの手法を扱った記事で詳しく説明しています。

図で見えたこと次の一手詳しく扱う記事
差し戻しの作り直しが月3時間なぜ誤りが出るのかを掘り下げるなぜなぜ分析のやり方
営業の確認待ちが平均2日待ちや転記のムダを探す事務の7つのムダとは?
確認と承認の順番や、そもそも両方必要かなくす・まとめるを先に考えるECRS(イクルス)とは?
改善したあとの流れ改善後の図を描いて今と比べるAs-Is/To-Be分析のやり方
現場の業務改善担当

ミナミさん

現場の業務改善担当

表では『請求書発行12時間』としか見えなかったのに、図にしたら差し戻しで3時間も使っていたんですね。

DrillSparkコンサルタント

スパーク先輩

DrillSparkコンサルタント

そう、表は『どこを見るか』を教えてくれて、図は『なぜ時間がかかるか』を教えてくれるんだ。だから棚卸しは表で終わらせず、1行だけでも図にするところまでやろう。

業務棚卸でよくある4つの失敗と対策

業務棚卸がうまくいかない原因の多くは、「表を作って終わる」「細かすぎて止まる」「本人に聞かない」「一度きりで更新しない」の4つです。

失敗起きること対策
表を作って満足する一覧はできたが、何も変わらない最初から「3つの基準で1行選び、図にする」までを予定に入れる
細かくしすぎて終わらない行が数百になり、途中で止まる1行は別の人に頼める大きさ。1周目は5列だけ
担当者に聞かずに書く月末・年1回の仕事や受け渡しが抜ける下書きを見せて1人15分、3つの質問で直す
一度作って更新しない異動やシステム変更で表が古くなる見直す時期を決め、人やシステムが変わったときも直す

失敗1:表を作って満足する

棚卸表ができると、仕事が一覧になっただけで達成感があります。しかし表は「どこを見るか」を教えてくれるだけで、時間がかかる理由までは教えてくれません。棚卸しを始める時点で「表の完成から1週間以内に、1行を業務フロー図にする」のように、図にするところまで日付を決めておきます。

失敗2:細かくしすぎて終わらない

正確にしようとするほど行が増え、20業務のつもりが200行になって止まる、ということが起きます。1行は「別の人にそのまま頼める大きさ」にそろえ、1周目は基本の5列だけで埋めきることを優先します。細かい手順は、選んだ業務だけ図の中で書けば足ります。

失敗3:担当者に聞かずに書く

自分の目に見えている仕事だけで表を作ると、月末や年1回の仕事、他の人との受け渡しが抜けます。記入例でも、下書きの6業務にヒアリングで2業務が加わりました。「あなたが1週間休んだら止まる仕事は?」の質問は、担当が1人だけの仕事を見つけるのにも役立ちます。

失敗4:一度作って更新しない

業務は人の異動や新しいシステムの導入で変わります。四半期ごとや年度替わりなど、見直す時期をあらかじめ決めておきます。加えて、担当者が変わるとき、ソフトを入れ替えるときにも、その部分の行だけ直しておくと、表が古くなりません。

まとめ|棚卸表を作ったら、まず1行を業務フロー図にする

業務棚卸は、「5列の表で仕事の量をつかみ、3つの基準で選んだ1行を図にする」ところまでが1セットです。

この記事のまとめ

  • 棚卸表は「業務名・担当・頻度・1回の時間・次に渡す相手」の5列と、計算で出す年間時間から始める
  • 自分で下書きし、担当者には1人15分だけ聞いて直す
  • 1行の細かさは「別の人にそのまま頼める大きさ」
  • 「年間時間が大きい」「担当が1人だけ」「渡す相手が2者以上か、差し戻しがある」の3つの基準で、図にする行を選ぶ
  • 選んだ1行は、次に渡す相手をたどると業務フロー図になる

棚卸表は、会社の仕事の地図のようなものです。地図で目的地を決めたら、次はその場所を詳しく見る番で、それが業務フロー図です。表の1行を図に開くと、待ちや差し戻しのように表では見えなかった時間が見えてきます。

DrillSparkでは、業務の流れを日本語で説明するとAIがフローチャートの下書きを作り、対話しながら直せます。無料プランがあり、クレジットカードは不要です。

まずは、棚卸表でいちばん当てはまる数が多かった1行を選び、その業務を1枚の図にするところから始めてみてください。

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よくある質問

業務棚卸表のフォーマットには、何の列が必要ですか?
1〜2人で進めるなら「業務名・担当・頻度・1回の時間・次に渡す相手」の5列と、計算で出す年間時間で足ります。頻度を年間の回数(毎日なら240、週1回なら52、月1回なら12)で入れておけば、Excelの式で年間時間を出せます。副担当・大中小分類・使う道具などの列は、2周目に必要な分だけ足してください。
業務棚卸はどこまで細かく書けばいいですか?
その仕事だけを別の人にそのまま頼める大きさが目安です。「取引先対応」のような書き方ではなく、「取引先からの見積依頼に回答する」のように動詞まで書きます。1回5分もかからない作業は上の行にまとめ、細かい手順は表ではなく業務フロー図やマニュアルで書きます。
業務棚卸にはどのくらい時間がかかりますか?
範囲と人数によって大きく変わります。全員に表を配って書いてもらう方法より、自分で下書きを作り、担当者1人あたり15分ほど聞いて直す方法のほうが、忙しい小さな会社でも止まりにくく、短い期間で下書きまで進めやすくなります。最初は1部署・8〜20業務くらいに範囲を絞ると見通しが立ちます。
個人の業務棚卸はどうすればいいですか?
同じ5列で、自分の1〜2週間の仕事を書き出します。予定表や送ったメールの履歴から拾うと抜けにくく、月末や年1回の仕事は過去の予定表をさかのぼって足します。異動や引き継ぎの準備、評価面談の前の振り返りにも使えます。
業務棚卸が終わったら、次に何をすればいいですか?
年間時間が大きい、担当が1人だけ、渡す相手が2者以上か差し戻しがある、の3つの基準で1行を選び、業務フロー図にします。図で待ちや差し戻しが見えたら、ECRS(なくす→まとめる→入れ替える→簡単にする)の順で改善案を考えます。

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