As-Is/To-Be分析のやり方|業務フローで現状とあるべき姿を描き比べる

「現状と理想を1枚で見せてほしい」――システム導入の稟議や改善会議の前にそう頼まれて、手が止まっていませんか。As-Is/To-Beという言葉は知っていても、何をどう描けば比べられるのかは、意外と誰も教えてくれません。
コツは、同じ業務を同じ粒度で2枚の業務フロー図に描き、変わった工程に印を付けることです。
この記事では、経費精算を例に「今の流れ」と「あるべき流れ」を並べ、To-Beの作り方、BPRとの違い、効果の測り方まで、会議に出せる形で順に解説します。
この記事でわかること
- As-Is・To-Be・ギャップの意味と、業務フロー図で描く理由
- 同じ業務のAs-Is図とTo-Be図を並べた実例と、何が変わったかの読み方
- To-BeをECRSの順で作る6ステップ
- 業務改善とBPR(業務改革)の違いと、どちらで描くかの決め方
- 効果を測る3つの指標と、会議で通す1枚の作り方
As-Is/To-Be分析とは?押さえる3つの用語
As-Is/To-Be分析とは、業務の「今の姿(As-Is)」と「あるべき姿(To-Be)」を同じ形式で描き、その差(ギャップ)を埋める手を決める方法です。システムを入れるときの要件定義(何を作るかを決める工程)でも、まず今の業務を把握し、次にあるべき姿を具体化する、という順番で使われます。
As-Is・To-Be・ギャップの意味
| 用語 | 意味 | この記事での成果物 |
|---|---|---|
| As-Is(アズイズ) | 今、実際に回っている業務の流れ | 今の流れの業務フロー図(図1) |
| To-Be(トゥービー) | 目的を満たすための次の流れ | あるべき流れの業務フロー図(図2) |
| ギャップ | 2枚の差。消える工程・まとまる工程・移る工程・減る待ち時間 | 何が変わったかの表と、差を埋める計画 |
業務フロー図で描くと差が見える理由
箇条書きや表だけで比べると、「どの順番で」「どこで待っているか」「誰に差し戻しているか」が消えてしまいます。業務フロー図にすれば、工程が消えた・順番が入れ替わった・差し戻しの矢印が短くなった、といった変化を目で追えます。
業務改善のどの段階で使うか
使うのは改善の「設計」の段階です。「業務改善の進め方」の記事の6ステップでいえば、現状の可視化から改善策の立案まで(ステップ2〜4)に当たります。
ミナミさん
現場の業務改善担当
会議資料なら、パワポに「現状」「理想」って箇条書きを並べるだけじゃダメですか?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
箇条書きだと「どこで待っているか」「誰に戻っているか」が消えちゃうんだ。同じ業務を2枚の図で並べると、消えた工程がそのまま改善の中身になるよ。
同じ業務を2枚で比べる|経費精算の例と4種類の変化
同じ業務を同じ粒度で2枚描くと、「なくなった工程」「まとまった工程」「順番が変わった工程」「簡単になった工程」の4種類の変化が一目で分かります。ここでは経費精算を例に、実際に2枚を並べてみます。
例の前提:従業員40名の会社の経費精算
たとえば、従業員40名の設備工事会社で、経費精算が月80件ある場合を考えます。経費と交通費は別々の紙の申請書で出し、課長の押印のあと、5万円以上の申請(全体の約3割、月24件ほど)は部長の押印も要ります。経理が内容を確認して会計ソフトに手入力し、月末に締めて翌月25日に振り込むルールです。
1件あたり人が手を動かす時間は、申請書の作成15分・経理の確認5分・手入力5分の合計約25分です。それなのに、申請から振込までは平均25営業日かかっています。現場に出ていることが多い課長の押印待ちが平均3営業日、部長の押印待ちが平均2営業日、差し戻しが15%(月12件)あり、残り(約20営業日)は月末の締めと翌月の振込日までの待ちです。
As-Is:今の流れ(図1)
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 経費を立て替える
- 経費と交通費の申請書を別々に書く
- 課長が押印する
- 5万円以上?
- 部長が押印する
- 経理が内容を確認する
- 不備がある?
- 経理が会計ソフトに手入力する
- 月末に締めて翌月25日に振り込む
- 精算完了
流れ(矢印)
- 経費を立て替える → 経費と交通費の申請書を別々に書く
- 経費と交通費の申請書を別々に書く → 課長が押印する
- 課長が押印する → 5万円以上?
- 5万円以上? →(はい)→ 部長が押印する
- 5万円以上? →(いいえ)→ 経理が内容を確認する
- 部長が押印する → 経理が内容を確認する
- 経理が内容を確認する → 不備がある?
- 不備がある? →(はい)→ 経費と交通費の申請書を別々に書く
- 不備がある? →(いいえ)→ 経理が会計ソフトに手入力する
- 経理が会計ソフトに手入力する → 月末に締めて翌月25日に振り込む
- 月末に締めて翌月25日に振り込む → 精算完了
図1を読むときは、工程の数より「矢印の上で止まっている時間」に目を向けます。作業は合計25分なのに、振込までは25営業日。この業務の課題は作業の遅さではなく、押印・差し戻し・月1回の締めが生む待ちだと分かります。
To-Be:あるべき流れ(図2)
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 経費を立て替える
- 1つの申請画面に入力し領収書を撮影する
- 必須項目がそろっている?
- 課長がスマホで承認する
- 経理が内容を確認する
- 不備がある?
- 申請データから仕訳を連携する
- 月2回の振込日に振り込む
- 精算完了
流れ(矢印)
- 経費を立て替える → 1つの申請画面に入力し領収書を撮影する
- 1つの申請画面に入力し領収書を撮影する → 必須項目がそろっている?
- 必須項目がそろっている? →(いいえ)→ 1つの申請画面に入力し領収書を撮影する
- 必須項目がそろっている? →(はい)→ 課長がスマホで承認する
- 課長がスマホで承認する → 経理が内容を確認する
- 経理が内容を確認する → 不備がある?
- 不備がある? →(はい)→ 1つの申請画面に入力し領収書を撮影する
- 不備がある? →(いいえ)→ 申請データから仕訳を連携する
- 申請データから仕訳を連携する → 月2回の振込日に振り込む
- 月2回の振込日に振り込む → 精算完了
図2は、図1と同じ向き・同じ始まりと終わりで描いています。そろえておくと、並べたときに変わった工程だけが浮かび上がります。
何が変わったか:4種類の変化と数字
変化はE・C・R・Sの4種類です。S(簡単にする)は、課長の承認と、入力・振込の2か所に当てています。
| 変化した点 | As-Is | To-Be | ECRS |
|---|---|---|---|
| 部長の押印 | 5万円以上で必要(月約24件) | なくし、部長は月1回の一覧で事後に確認 | E(なくす) |
| 申請の用紙 | 経費と交通費で別々の紙 | 1つの申請にまとめる | C(まとめる) |
| 不備の確認 | 承認のあとに経理が見つけて差し戻す | 申請の時点で必須項目を確かめ、承認の前に戻す | R(入れ替える) |
| 課長の承認 | 紙に押印(現場に出ると3営業日待ち) | スマホで承認する | S(簡単にする) |
| 入力と振込 | 経理が会計ソフトに手入力・月1回振込 | 申請データから仕訳を連携・月2回振込 | S(簡単にする) |
To-Beの数字は、どれも実績ではなく着手前に立てる目標です。リードタイムは10営業日、差し戻し率は5%を目指します。
経理の作業は、As-Isが1件10分(確認5分+手入力5分)×80件で月約13時間です。To-Beでは手入力がなくなり、必須項目を申請時に確かめるので確認も1件3分ほどに縮む見込みです。3分×80件=月約4時間を目標にします。
システムの導入に当たるS(簡単にする)を最後にしたのには理由があります。最初に経費精算システムを入れていたら、部長の押印もそのまま電子承認の1段として残り、待ちは減らなかったはずです。先に「その押印は要るか」を問うのがECRSの順番です。4原則の詳しい説明は「ECRS(イクルス)とは?」の記事にまとめています。
まずは、あなたの業務のAs-Isを1枚描いてみてください。To-Beは、描いたAs-Isに次の節からの手順で印を付けて作ります。
ミナミさん
現場の業務改善担当
To-Beを描きたいのに、As-Isを描くのって遠回りに感じます…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
As-Isがないと「何が変わったか」を誰も数えられないんだ。図1で待ちが25営業日あると分かったから、図2で縮める場所が決まったよね。As-IsはTo-Beの下書きだと思えばいいよ。
As-Is/To-Be分析の進め方6ステップ
目的と範囲を決め、As-Isを実態で描き、工程ごとに時間を書き込んでからECRSの順でTo-Beを描き、差を埋める計画を立てて小さく試す――この6ステップで進めます。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 目的と範囲を決める
- As-Isを実態で描く
- 工程ごとに時間を書き課題に印
- ECRSの順でTo-Beを描く
- ギャップを埋める計画を立てる
- 小さく試して測る
- 目標に届いた?
- To-Beを新しいAs-Isにする
流れ(矢印)
- 目的と範囲を決める → As-Isを実態で描く
- As-Isを実態で描く → 工程ごとに時間を書き課題に印
- 工程ごとに時間を書き課題に印 → ECRSの順でTo-Beを描く
- ECRSの順でTo-Beを描く → ギャップを埋める計画を立てる
- ギャップを埋める計画を立てる → 小さく試して測る
- 小さく試して測る → 目標に届いた?
- 目標に届いた? →(いいえ)→ 工程ごとに時間を書き課題に印
- 目標に届いた? →(はい)→ To-Beを新しいAs-Isにする
ステップ1:目的と範囲(始まりと終わり)を決める
最初に、図の始まりと終わりを決めます。経費精算なら「経費を立て替えたとき」から「振込が終わったとき」までです。目的は「振込までを10営業日以内に」のように数字で書くと、To-Beの良し悪しを判定できます。
どの業務から手を付けるか迷うときは、「業務棚卸のやり方」の記事の方法で候補を並べ、時間のかかっている業務から選んでください。
ステップ2:As-Isを「実態」で描く
As-Isは、マニュアルに書かれた流れではなく、実際にやっている流れで描きます。担当者に1件なぞってもらい、差し戻しや例外(課長が不在のときにどうしているか)も省かずに入れます。記号や描き方の基本は「業務フローの作り方」の記事が参考になります。
ステップ3:工程ごとに作業時間と待ち時間を書き、課題に印を付ける
描いたAs-Isの工程ごとに「作業○分」「待ち○日」を書き込みます。リーン生産方式のVSM(バリューストリームマッピング)という手法でも、価値を生む時間と、待ちや移動のような価値を生まない時間を分けて記録します。分けて書くと、どこを縮めればよいかが数字で見えます。
課題に印を付けるときは、「振込が遅い」という現象と、「押印が2段あり、課長が不在がち」という課題を分けて書きます。ムダの見つけ方は「事務の7つのムダとは?」、原因の掘り下げ方は「なぜなぜ分析のやり方」の記事にまとめています。
ステップ4:ECRSの順でTo-Beを描く
印の付いたAs-Isの工程1つずつに「なくせるか→まとめられるか→入れ替えられるか→簡単にできるか」の順で問いを当て、その結果を描き直してTo-Beにします。やり方は次の節で詳しく説明します。
ステップ5:ギャップを埋める計画を立てる
As-IsとTo-Beの差は、手順・道具・人の3種類に分けると、誰が何をすればよいかが決まります。
| ギャップの種類 | 例 | 埋め方 |
|---|---|---|
| 手順のギャップ | 押印が2段ある | 経費規程を改め、部長の押印を事後確認に変える |
| 道具のギャップ | 経理が会計ソフトに手入力している | 申請データから仕訳を連携する仕組みを入れる |
| 人のギャップ | 課長が現場に出て不在がち | 代わりに承認する人を決めておく |
計画には、いつ・誰が・何を変えるかに加えて、「いつ測るか」「誰が測るか」も入れておきます。ここを書き忘れると、変えたあとで効果を確かめる人がいなくなります。
ステップ6:小さく試して測り、To-Beを新しいAs-Isにする
いきなり全社で切り替えず、1つの部署や1か月分の申請から試します。目標に届かなければステップ3に戻って印を付け直し、届いたらそのTo-Beが次のAs-Isになります。図3のループは、この繰り返しを表しています。
To-Beの描き方|As-Isの工程にECRSを当てる4つの問い
To-Beは白紙から描くのではなく、As-Isの工程1つずつに「なくせるか→まとめられるか→入れ替えられるか→簡単にできるか」の順で印を付け、その結果を描き直して作ります。
工程ごとにE・C・R・Sの印を付ける
経費精算の例で、As-Isの工程ごとに問いを当てて判定した結果が次の表です。
| As-Isの工程 | 問い | 判定 | To-Beでの形 |
|---|---|---|---|
| 経費と交通費の申請書を別々に書く | 用紙を分ける必要はあるか? | C | 1つの申請にまとめる |
| 課長が押印する | 誰の確認が必要か? | 残す+S | スマホで承認できるようにする |
| 部長が押印する | なくしたら何が困るか? | E | 月1回の一覧で事後に確認する |
| 経理が内容を確認する | 不備はいつ見つけるのが早いか? | R | 必須項目は申請の時点で確かめる |
| 会計ソフトに手入力する | 同じ内容を2回打っていないか? | S | 申請データから仕訳を連携する |
判定で一番効くのは「なくしたら何が困るか?」という問いです。誰も困る理由を答えられない工程が、E(なくす)の候補になります。この例では、部長の押印は「昔からそうしている」以上の理由がなく、月1回の一覧で事後に確認すれば足りる、と判断しました。
ECRSの4原則そのものの説明は、ここでは繰り返しません。この節のポイントは、原則を業務全体にではなく、As-Isの工程1つずつに当てることです。1行ずつ判定すると、「なんとなくシステム化」ではなく、工程ごとに理由のあるTo-Beになります。
印の付いたAs-IsからTo-Beを描き直す
印を付けたら、Eの工程を消し、Cの工程を1つにまとめ、Rの工程を移し、Sの工程のやり方を書き換えて、To-Beを描き直します。このときAs-Isと同じ向き・同じ始まりと終わりにそろえておくと、あとで2枚を並べて比べやすくなります。
AIや自動化を入れる工程の決め方
S(簡単にする)には、AIやシステムに任せる工程も入ります。ただし任せるのは、E・C・Rを当てたあとに残った工程だけです。先に自動化すると、本来なくせた工程まで仕組みの中に固定してしまうからです。
どの工程をAIに任せるかは「自動化する業務の選び方」、AIと人の分担を図にする方法は「AIエージェントと人間の業務設計」の記事が詳しいです。
業務改善かBPRか|To-Beの描き方を決める2つの道
今の流れの時間やミスを減らしたいならAs-Isを下敷きに直す「業務改善」、顧客や制度が変わって今の流れの前提が崩れたならゼロから描き直す「BPR(業務改革)」を選びます。
BPRとは:流れを根本から描き直す考え方
BPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、マイケル・ハマーとジェイムズ・チャンピーが1993年の著書で広めた考え方です。コスト・品質・サービス・スピードを劇的に良くするために、業務プロセスを根本から考え直し、抜本的に設計し直すことを指します。
AIの導入でも同じ話が出ています。マッキンゼーの2026年の調査(The state of AI in 2026)では、AIで大きな成果を上げている企業は、そうでない企業に比べて、業務の流れを根本から描き直したと答えた割合がはるかに高いと報告されています。
業務改善とBPRの違い
| 観点 | 業務改善 | BPR(業務改革) |
|---|---|---|
| 出発点 | As-Isを下敷きにする | 目的からゼロで描く |
| 変える範囲 | 工程や手順 | 流れ・組織・システムの前提 |
| 期間の目安 | 数週間〜数か月 | 半年〜年単位 |
| 向く場面 | 時間やミスを減らしたい | 制度の変更・事業の転換・システムの刷新 |
| As-Isの役割 | 直す対象 | 移行のときに抜けを確かめる台帳 |
期間はあくまで目安です。業務の大きさや関わる部署の数で大きく変わります。
どちらで描くかの決め方(図4)
迷ったら、最初に「今の流れの前提が変わったか」を問います。前提が変わっていなければ、As-Isを下敷きにECRSで直すほうが早く、安全です。前提が変わっていても、その変化が業務の一部に限られるなら、やはりAs-Isを直せば足ります。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- To-Beを描き始める
- 今の流れの前提が変わった?
- As-Isを下敷きにECRSで直す
- その変化は業務の一部に限られる?
- 目的からゼロでTo-Beを描く
- As-Isと照らして抜けを確かめる
- 変わった工程に印を付けて比べる
- 関係者と合意する
流れ(矢印)
- To-Beを描き始める → 今の流れの前提が変わった?
- 今の流れの前提が変わった? →(いいえ)→ As-Isを下敷きにECRSで直す
- 今の流れの前提が変わった? →(はい)→ その変化は業務の一部に限られる?
- その変化は業務の一部に限られる? →(はい)→ As-Isを下敷きにECRSで直す
- その変化は業務の一部に限られる? →(いいえ)→ 目的からゼロでTo-Beを描く
- 目的からゼロでTo-Beを描く → As-Isと照らして抜けを確かめる
- As-Isを下敷きにECRSで直す → 変わった工程に印を付けて比べる
- As-Isと照らして抜けを確かめる → 変わった工程に印を付けて比べる
- 変わった工程に印を付けて比べる → 関係者と合意する
中小企業がBPRをするときの注意
BPRは影響が大きく、役割が変わる人への説明を後回しにすると進みません。また、As-Isを描かずにゼロから描くと、例外の処理や法律で決まった手続きが抜けがちです。ゼロから描く場合も、As-Isは「抜けがないかを照らし合わせる台帳」として必ず残しておきましょう。
ミナミさん
現場の業務改善担当
BPRって大企業の話ですよね?うちみたいな小さな会社には大げさな気がします。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
規模より「前提が変わったか」で選ぶといいよ。法改正や取引先の電子化で今の流れが合わなくなったなら、小さな会社でも1業務だけゼロから描き直す価値がある。逆に前提が同じなら、As-Isを直すほうが早くて安全だね。
To-Beの効果を測る3つの指標と測り方
効果は「リードタイム」「工数」「品質」の3つの指標で、着手前の値と比べて測ります。
3つの指標:リードタイム・工数・品質
リードタイムは始まりから終わりまでの日数、工数は作業時間×件数、品質は差し戻し率やミスの件数です。業務改善でよく使うQCD(品質・コスト・納期)に、そのまま対応します。
| 指標 | 測り方 | As-Is(例) | To-Be目標(例) |
|---|---|---|---|
| リードタイム | 申請日と振込日の差を1件ずつ記録する | 平均25営業日 | 10営業日 |
| 工数 | 経理の作業時間×月の件数 | 月約13時間 | 月約4時間 |
| 品質 | 差し戻し件数÷申請件数 | 15% | 5% |
As-Is図の工程ごとに「作業○分・待ち○日」を書いておけば、この表の元になる数字はほぼそろっています。図がそのまま測定の台帳になるわけです。
着手前の値(ベースライン)を先に取る
比べる基準になる着手前の値を、ベースラインと呼びます。目安として着手前の2〜4週間ほど記録し、代表値には極端な値に引っ張られにくい中央値を使うとよいでしょう。
ミナミさん
現場の業務改善担当
測る時間なんてないです…。改善してから、思い出して数えるのじゃダメですか?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
後から思い出した数字は、会議で必ず突っ込まれるんだ。全部じゃなくていい。申請日と振込日の2つだけ、今の表に書き足すところから始めよう。
すぐ動く数字と、あとで効く数字を分ける
指標には、1か月以内に動く先行指標(スマホで申請した割合、承認待ちの日数)と、数か月たってから見えてくる遅行指標(経理の残業時間、差し戻し率が下がったまま定着したか)があります。
先行指標が動いていれば、遅行指標がまだ動かなくても、取り組みを止める理由にはなりません。会議では2種類を分けて示すと、「効果が出ていない」という誤解を防げます。
会議・稟議で通す1枚の作り方|3つの要素
会議に出す1枚は、「As-IsとTo-Beを同じ向き・同じ粒度で左右に並べる」「変わった工程に印を付ける」「3つの指標の表を下に添える」の3つでできています。これに目的と決めてほしいことを足し、1枚の配置は次の4か所になります。
- 上に目的を1文で書く(例:振込までを25営業日から10営業日へ)
- 左にAs-Is、右にTo-Beを並べる
- 下に3つの指標の表を添える
- 右下に「この会議で決めてほしいこと」を1行で書く
左右に並べ、同じ向きと粒度にそろえる
2枚の向きや粒度がそろっていないと、変わった工程ではなく描き方の違いに目が行ってしまいます。図1と図2を同じ向きで描いたのは、このためです。
変わった工程に印を付ける
| 変化 | 印の例 |
|---|---|
| 消えた工程 | As-Is側を灰色にして取り消し線を引く |
| まとまった工程 | As-Is側の2つの工程を枠で囲む |
| 移った工程 | 矢印で移動先を示す |
| 新しい工程 | To-Be側に色を付ける |
数字の表を添え、細部は下の階層に分ける
1枚に載せる工程は5〜10個が目安です。経理の確認手順のような細かい作業まで載せると、肝心の変化が埋もれます。細部は別の図に分けておき、会議で聞かれたら開けるようにしておきます。
「パワポのテンプレート」を探している方へ。スライドの枠はすぐに作れますが、難しいのは同じ粒度の図を2枚そろえることのほうです。図は作図ツールで作り、画像としてスライドに貼ると、直すたびに図形を並べ直さずに済みます。
DrillSparkでは、日本語で業務を説明するとAIがフローチャートの下書きを作り、対話しながら直せます。細かい手順は図の中の下の階層(サブプロセス)に分けてドリルダウンできるので、会議用の1枚を5〜10工程に保てます。できた図はPNGやPDFで書き出して、スライドに貼れます。
As-Is/To-Be分析でよくある4つの失敗と対策
失敗の多くは、「As-Isを理想で描く」「To-Beがツール導入の図になる」「To-Beが現場で回らない」「比べて終わり、測らない」の4つです。
| 失敗 | 起きること | 対策 |
|---|---|---|
| As-Isをマニュアル通りに描く | 差し戻しや例外が図から消え、本当の課題が見えない | 実際に作業している人に1件なぞってもらう |
| To-Beがシステムを入れた図になる | 不要な工程まで電子化され、待ちが残る | Eから順に問いを当て、Sは最後にする |
| To-Beが現場で回らない | 例外が起きた初日に流れが止まる | 例外と担当者を描き、担当者にTo-Beをなぞってもらう |
| 比べて終わり、測らない | 効いたかどうか誰も説明できない | 計画に「測る日」と「測る人」を入れる |
失敗1:As-Isをマニュアル通りに描いてしまう
マニュアルや規程から描いたAs-Isには、実際に起きている差し戻しや例外が載りません。実際に作業している人に1件なぞってもらい、課長が不在のときの回し方まで描きます。
失敗2:To-Beが「システムを入れた図」になる
紙の押印を電子承認に置き換えただけのTo-Beは、見た目は新しくても流れは同じです。部長が出張中なら、電子承認でも待ちは残ります。Eから順に問いを当て、システムの導入に当たるS(簡単にする)は最後にします。
失敗3:To-Beが現場で回らない
To-Beが正常な流れだけだと、初日から例外で止まります。例外の処理と担当者も描き込み、実際の担当者にTo-Beを1件なぞってもらいましょう。たとえば「課長が3日以上不在なら係長が代わりに承認する」と決めておけば、スマホ承認でも止まりません。
失敗4:比べて終わり、測らない
2枚の図を並べた会議で満足すると、To-Beが本当に効いたかが分かりません。ステップ5の計画に「測る日」と「測る人」を入れ、たとえば1か月後にリードタイムと差し戻し率を見直します。
まとめ|まず1つの業務のAs-Isを描こう
この記事のまとめ
- As-Is/To-Be分析は、今の流れとあるべき流れを同じ形式で描き、差を埋める手を決める方法
- 同じ業務を同じ向き・同じ粒度で2枚描くと、消えた工程や減った待ちが一目で分かる
- To-Beは、As-Isの工程1つずつにE→C→R→Sの順で印を付けて描き直す
- 前提が変わっていなければ業務改善、崩れていればBPRで描き直し、As-Isは照合用に残す
- 効果はリードタイム・工数・品質の3つで、着手前の値と比べて測る
As-Is/To-Be分析で一番大切なのは、きれいなTo-Beを描くことではなく、今の流れを正直に描くことです。As-Isが実態に近いほど、To-Beで何が変わるのかを数字で説明できます。
まず1つの業務の始まりと終わりを決め、今の流れ(As-Is)を1枚描くところから始めてください。To-Beは、その図にE・C・R・Sの印を付けるところから生まれます。
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