事務の7つのムダとムリ・ムダ・ムラ|工場のムダを事務に置き換えて業務フロー図で見つける

「7つのムダを探して、改善案を出してください」。研修でそう言われて調べてみると、出てくるのは部品の在庫や工場の運搬の話ばかり。伝票や稟議の仕事をしている自分には、どこがムダなのかピンとこない。そんな方は多いのではないでしょうか。
7つのムダは、事務の仕事にもそのまま置き換えられます。しかも業務フロー図に描くと、ムダは「戻る矢印」や「止まる箇所」として目に見える形で現れます。
この記事では、事務に置き換えた7つのムダとムリ・ムラの例、図の上で見つける5つの手順、見つけた後の進め方を解説します。
この記事でわかること
- 7つのムダとムリ・ムダ・ムラの意味と、2つの関係
- 工場の7つのムダを事務に置き換えた対応表(業務フロー図での見え方つき)
- 業務フロー図の上でムダに印を付けて見つける5ステップ
- 購入稟議の例で、ムダを時間に直して改善の順番を決める方法
- 事務のムダ取りでよくある失敗と対策
7つのムダとムリ・ムダ・ムラとは?2つの考え方の関係
7つのムダは「付加価値を生まない作業」を7種類に分けたもので、ムリ・ムダ・ムラ(3M)はそのムダに「負担の偏り(ムリ)」と「ばらつき(ムラ)」を加えた、職場の問題を見る3つの視点です。
7つのムダはトヨタ生産方式から生まれた考え方
7つのムダは、トヨタ生産方式の中で生まれた考え方で、大野耐一氏らが整理したとされます。トヨタ生産方式は「自働化」と「ジャスト・イン・タイム」を2本の柱とし、その中でムダ・ムラ・ムリをなくすことを目指しています。
もとは工場の考え方ですが、見ているのは「お客様にとって価値を生まない時間」です。部品を運ぶ時間も、書類を持って回る時間も、価値を生まないという点では同じです。だから事務にもそのまま使えます。
ムリ・ムダ・ムラ(3M)の意味
| 言葉 | 意味 | 事務でのひと言例 |
|---|---|---|
| ムリ | 人や設備の能力を超えた負担 | 月末に1人へ請求業務が集中する |
| ムダ | 付加価値を生まない作業・資源の浪費 | 同じ内容を2つの台帳に入力する |
| ムラ | 仕事の量や品質のばらつき | 担当者によって処理時間が倍違う |
3つにどの順番で取り組むかは、解説によって異なります。この記事では順番を決めつけず、業務フロー図の上で3つを一緒に探し、時間の大きいものから手を付ける立場をとります。
覚え方は「かざふてつどう」
7つのムダは、頭文字をとって「かざふてつどう」と覚える方法がよく紹介されます。加工・在庫・不良・手待ち・つくり過ぎ・動作・運搬の7つです。呼び方は解説によって少し違い、「作り過ぎ」「不良・手直し」と書くものもあります。
ミナミさん
現場の業務改善担当
ムダは何となく分かるんですけど、ムリとムラまで出てくると混乱します…。3つ別々に探さないといけないんですか?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
3つはつながっているんだ。ムラがあると忙しい日にムリが出て、ムリを避けるために余分な人手や「念のため」の作業というムダを抱える。だから別々に探すより、図の上で一緒に探すほうが早いよ。
事務の7つのムダ|工場の例を事務に置き換えた対応表
事務の7つのムダは「転記・承認待ち・差し戻し・探し物」のように、毎日の手順の中に形を変えて潜んでいます。
7つのムダの対応表(工場の例・事務の例・業務フロー図での見え方)
| ムダ | 工場の例 | 事務の例 | 業務フロー図での見え方 |
|---|---|---|---|
| つくり過ぎのムダ | 注文より多く作る | 誰も読まない日報・報告書、念のための多すぎる印刷や控え | 矢印の先がどこにもつながらない成果物 |
| 手待ちのムダ | 前工程の部品を待つ | 上長の承認待ち、回答待ち、システムの処理待ち | 判断・承認の手前で止まる工程 |
| 運搬のムダ | 部品を何度も運ぶ | 書類の手渡し、押印のための持ち回り、メールの転送 | 担当をまたぐ矢印の多さ |
| 加工そのもののムダ | 必要以上の精度で削る | 同じデータの転記・二重入力、過剰な書式整え、重複チェック | 同じ内容を扱う工程が2つ以上並ぶ |
| 在庫のムダ | 倉庫にたまる部品 | 未処理の書類の山、使わないファイルや古い版のデータ | 保管されたまま次へ進まない書類 |
| 動作のムダ | 工具を探して歩く | 書類・ファイル・メールを探す、画面を何度も切り替える | 「探す」「確認する」工程が何度も出てくる |
| 不良をつくるムダ | 不良品・手直し | 入力ミス、書類の不備による差し戻し・やり直し | 前の工程へ戻る矢印(差し戻しのループ) |
7つの中では、つくり過ぎのムダが最も注目すべきとされます。つくり過ぎると、置いておく場所(在庫)、運ぶ手間(運搬)、それを待つ時間(手待ち)と、ほかのムダを次々に呼び込むためです。
業務フロー図に描くと、ムダはこう見える
表の右端の列を使うと、ムダは図の形で探せます。たとえば、パソコンや備品を買うときの購入稟議を図に描き、ムダの候補に【】で印を付けると、次のようになります。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 申請者が購入稟議書をExcelで作る
- 印刷して総務へ手渡す 【運搬】
- 総務が稟議台帳と発注書に同じ内容を書き写す 【加工】
- 押印のため稟議書を課長の席と部長の決裁箱へ運ぶ 【運搬】
- 部長が週1回まとめて押印するのを待つ 【手待ち】
- 見積書の添付や記入はそろっている?
- 申請者へ差し戻して書き直す 【不良】
- 過去の見積書や前回の稟議を探して照合する 【動作】
- 社長が決裁する
- 発注する
- 誰も見ない稟議一覧表を作る 【つくり過ぎ】
流れ(矢印)
- 申請者が購入稟議書をExcelで作る → 印刷して総務へ手渡す 【運搬】
- 印刷して総務へ手渡す 【運搬】 → 総務が稟議台帳と発注書に同じ内容を書き写す 【加工】
- 総務が稟議台帳と発注書に同じ内容を書き写す 【加工】 → 押印のため稟議書を課長の席と部長の決裁箱へ運ぶ 【運搬】
- 押印のため稟議書を課長の席と部長の決裁箱へ運ぶ 【運搬】 → 部長が週1回まとめて押印するのを待つ 【手待ち】
- 部長が週1回まとめて押印するのを待つ 【手待ち】 → 見積書の添付や記入はそろっている?
- 見積書の添付や記入はそろっている? →(いいえ)→ 申請者へ差し戻して書き直す 【不良】
- 申請者へ差し戻して書き直す 【不良】 → 印刷して総務へ手渡す 【運搬】
- 見積書の添付や記入はそろっている? →(はい)→ 過去の見積書や前回の稟議を探して照合する 【動作】
- 過去の見積書や前回の稟議を探して照合する 【動作】 → 社長が決裁する
- 社長が決裁する → 発注する
- 社長が決裁する →(月末にまとめて)→ 誰も見ない稟議一覧表を作る 【つくり過ぎ】
図1では、ムダが「戻る矢印(差し戻し)」「押印の前で止まる箇所(承認待ち)」「同じ内容を扱う工程(転記)」「行き先のない成果物(一覧表)」として見えています。在庫のムダは図に描いていませんが、総務の机にたまった未処理の稟議書の山がそれに当たります。
順番にもムダの候補があります。書類の不備を押印の後で見つけていることと、決裁の前に発注書まで書いていることです。却下されれば、その発注書は使われません。
自分の業務でも同じです。今の手順を1枚の図に描き、表の右端の列と照らし合わせれば、ムダの候補に印が付けられます。
事務の7つのムダを3つのグループで解説(例つき)
7つを「止まるムダ」「重ねるムダ」「探す・直すムダ」の3つに分けると、事務の現場で見つけやすくなります。7つを1つずつ覚えるより、図のどこを見ればよいかがはっきりするからです。
止まるムダ(手待ち・運搬):承認待ちと受け渡し
止まるムダは、仕事そのものは進んでいないのに時間だけが過ぎていくムダです。事務では、承認を待つ時間と、書類やデータを人から人へ渡す時間がこれに当たります。
たとえば、部長が稟議書を週1回、金曜日にまとめて押印する場合を考えます。押印そのものは1件1分で終わっても、月曜日に出した稟議書は金曜日まで4日止まり、金曜日の夕方に出せば翌週の金曜日まで待ちます。止まるムダは作業時間には表れにくいので、「受けてから終わるまでの日数」で測るのがコツです。
重ねるムダ(加工・つくり過ぎ・在庫):転記、念のための資料、たまる書類
重ねるムダは、同じことを2回したり、必要以上のものを作ったりするムダです。代表は、申請書の内容を台帳に書き写すような転記と、誰が使っているか分からない報告書です。
たとえば、1件5分の転記が月に100件あれば、500分で月8時間を超えます。1件あたりは短くても、件数を掛けると大きな時間になるのが重ねるムダの特徴です。作った書類が使われずにたまっていけば、それは在庫のムダにもなります。
探す・直すムダ(動作・不良):探し物と差し戻し
探す・直すムダは、本来の仕事の前後で発生する余計な手間です。ファイルや過去のメールを探す時間と、不備が見つかってやり直す時間がこれに当たります。
たとえば、共有フォルダでファイルを探すのに1日10分かかる場合、月20日で200分、約3時間20分になります。差し戻しは、書き直す人だけでなく、もう一度確認する人の時間も使うので、1件の重さが見た目より大きくなります。
- 止まるムダを見つける問い:この工程の前で、書類は何日止まっているか
- 重ねるムダを見つける問い:同じ情報を2回書いていないか。この資料は誰が何に使っているか
- 探す・直すムダを見つける問い:差し戻しは月に何件あるか。探す時間は1日何分か
ミナミさん
現場の業務改善担当
承認待ちって、上司の都合ですよね。私たち担当者にはどうしようもないと思っていました…。
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
待ち時間は、図に描いて日数を書き込むと初めて話し合いの材料になるんだ。承認する人を減らす、金額で承認ルートを分けるといった手順の変更は、担当者からでも提案できるよ。
事務のムリとムラ|業務フロー図に出る2つのサイン
ムリは「1人の担当に工程や判断が集中している」、ムラは「人や時期によって分岐の行き先や件数が変わる」という形で、業務フロー図に現れます。
ムリのサイン:1つの担当に工程と判断が集中している
担当ごとに図を分けて描くと、特定の人の欄にだけ工程や判断のひし形が並ぶことがあります。これがムリのサインです。その人が休んだり忙しかったりすると、流れ全体がそこで止まります。
ムラのサイン:人によって分岐の行き先が変わる/月末に件数が偏る
ムラには、人によるムラと時期によるムラがあります。同じ判断なのに担当者によって「はい」と「いいえ」が分かれる、月末や期末にだけ件数が跳ね上がる、といった形です。図だけでは見えにくいので、次の表のように数字で確かめます。
| サイン | 図での見え方 | 確かめる数字 |
|---|---|---|
| ムリ | 特定の担当の欄に判断と工程が集中している | 担当ごとの件数・残業時間 |
| ムラ(人) | 同じ判断で担当により行き先が違う | 担当別の差し戻しの割合 |
| ムラ(時期) | 締め日や期末の前に処理がたまる | 日別・週別の件数 |
ムリ・ムラはムダを生む(つながりの見方)
たとえば総務2名のうち1名だけが「この購入に稟議が要るかどうか」を判断できる場合、その1名が休むと稟議の受付が止まります(ムリ)。もう1名は判断の基準を知らないため、差し戻しの割合が高くなります(ムラ)。そして差し戻しの書き直しと再確認が、不良をつくるムダになります。
このように、ムリとムラはムダの原因になっていることが多くあります。判断の基準が特定の人の頭の中にあることが原因なら、その深掘りは「属人化を解消するには?」の記事で扱っています。この記事では、図に出るサインを見つけるところまでにとどめます。
業務フロー図でムダを見つける5ステップ
業務を1つ選んで今の流れを描き、7つのムダの印を付けてから、時間に直して大きい順に並べる。この5ステップで、改善の候補が数字付きで決まります。「業務改善の進め方」の記事の6ステップでいえば、現状の可視化から課題の洗い出しまで(ステップ2〜3)に当たります。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 対象の業務を1つ選ぶ
- 今の流れをありのまま描く
- 工程と矢印に7つのムダの印を付ける
- 1件の時間×月の件数を書き込む
- 月の時間が大きい順に候補を選ぶ
- 原因はすぐ分かる?
- ECRSで改善案を出す
- なぜなぜ分析で原因を掘る
- 改善後の流れを描いて比べる
流れ(矢印)
- 対象の業務を1つ選ぶ → 今の流れをありのまま描く
- 今の流れをありのまま描く → 工程と矢印に7つのムダの印を付ける
- 工程と矢印に7つのムダの印を付ける → 1件の時間×月の件数を書き込む
- 1件の時間×月の件数を書き込む → 月の時間が大きい順に候補を選ぶ
- 月の時間が大きい順に候補を選ぶ → 原因はすぐ分かる?
- 原因はすぐ分かる? →(分かる)→ ECRSで改善案を出す
- 原因はすぐ分かる? →(分からない)→ なぜなぜ分析で原因を掘る
- なぜなぜ分析で原因を掘る → ECRSで改善案を出す
- ECRSで改善案を出す → 改善後の流れを描いて比べる
ステップ1:対象の業務を1つ選ぶ
最初は、件数が多い業務、差し戻しが多い業務、残業が出ている業務から1つ選びます。件数が多いほど、1件あたりの小さなムダが大きな時間になり、改善の手応えも大きくなるからです。
ステップ2:今の流れをありのまま描く
描くのは「こうあるべき」手順ではなく、実際にやっている手順です。マニュアルに書いていない確認や、たまに起きる差し戻しも描きます。ムダはたいてい、そうした「書かれていない手順」の中にあります。記号の使い方や描き方の細部は「業務フローの作り方」の記事で扱っています。
ステップ3:対応表を横に置き、工程と矢印に印を付ける
前の章の対応表を横に置き、「業務フロー図での見え方」の列と図を1行ずつ照らし合わせます。戻る矢印には【不良】、承認の手前で止まる工程には【手待ち】というように、工程名の後ろに【ムダ名】を書き足します。印は人ではなく、工程と矢印に付けます。
ステップ4:印ごとに「1件の時間×月の件数」を書き込む
印を付けたら、それぞれに1件あたりの時間と月の件数を書き込み、掛け算で月の時間に直します。数字はおおよそで構いません。担当者に「1件だいたい何分?」と聞けば十分です。
ステップ5:月の時間が大きく、手を付けやすいものから選ぶ
最後に、月の時間が大きい順に並べ、その中から手を付けやすいものを改善の候補に選びます。手待ちのように作業時間に表れないムダは、「受けてから終わるまでの日数」として別の欄に書いておきます。
ミナミさん
現場の業務改善担当
全部の業務を描いてから、ムダを探したほうがいいですか?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
最初は1つで十分だよ。件数の多い業務を1枚描くだけでも、印はいくつも付くことが多いんだ。部署の仕事を全部洗い出したくなったら、「業務棚卸のやり方」の記事を見てね。
図は手描きでも構いません。DrillSparkなら、日本語で業務の流れを説明するとAIがフローチャートの下書きを作り、対話しながら直せます。無料プランで試せて、クレジットカードの登録も要りません。
具体例|購入稟議の流れで見つけた6つのムダを時間と日数に直す
図1の購入稟議を例に、印を付けたムダを時間に直すと、この例では作業時間だけで月16時間30分になり、さらに申請から決裁まで平均6営業日かかっていることが分かります。
会社と業務の前提(架空)
たとえば、社員25名の機械部品の販売会社を考えます。パソコン・事務用品・ソフトウェア・展示会の備品などの購入稟議が月30件あり、総務2名が受け付けています。申請は紙の稟議書で、課長の押印と、部長が毎週金曜日にまとめてする押印を経て、社長が決裁します。
印を付けたムダを時間に直す
| ムダ | 場所 | 1件・1回の時間 | 月の回数 | 月の時間 |
|---|---|---|---|---|
| 運搬 | 押印のため稟議書を課長と部長へ運ぶ | 10分 | 30件 | 5時間 |
| 加工 | 稟議台帳と発注書への転記 | 8分 | 30件 | 4時間 |
| 不良 | 不備による差し戻しと書き直し | 30分 | 6件 | 3時間 |
| 動作 | 過去の見積書や前回の稟議を探す | 5分 | 30件 | 2時間30分 |
| つくり過ぎ | 月次の稟議一覧表の作成 | 2時間 | 1回 | 2時間 |
| 手待ち | 部長の週1回の押印を待つ | 作業時間ではなく日数 | — | 別に記録 |
| 合計 | 16時間30分 |
計算は、運搬が10分×30件=300分、加工が8分×30件=240分、不良が30分×6件=180分、動作が5分×30件=150分です。差し戻しの30分は、申請者の書き直し20分と総務の再確認10分を足したものです。5件に1件が差し戻されている計算になります。
手待ちは作業時間ではなく、リードタイム(申請を受けてから決裁までの時間)を延ばすムダなので、別に記録します。この例では申請から決裁まで平均6営業日かかり、そのうち約4日が押印待ちでした。部長の押印は週1回なので、稟議書を出した曜日によって、部長の押印までの待ちが1日から5日まで変わります。発注が遅れれば、展示会の準備や営業の段取りにも響きます。
改善の順番を決める
月の時間が最も大きいのは運搬の5時間です。運搬と手待ちは、どちらも「紙の稟議書に順に押印をもらう」ことから生まれています。そこで、ECRSのE(なくす)から考え、押印のための持ち運びをやめて画面の上で承認する方法を検討します。画面で届くようになれば、部長も週1回まとめる必要がなくなり、届いた日に承認できます。あわせて「10万円未満は課長の承認まで、10万円以上は課長・部長・社長」のように金額で承認ルートを分ければ、待つ人の数そのものが減ります。
次は加工の4時間です。申請の内容から台帳を作れるようにして、入力を1回にまとめます(C:まとめる)。不良の3時間は、見積書の添付と記入の確認を押印の前に回す入れ替え(R)の候補です。動作の2時間30分は、承認済みの稟議を一覧から検索できるようにして、前回の見積書をすぐ引けるようにします(S:簡単にする)。つくり過ぎの2時間は、一覧表を誰が何に使っているかを確かめ、使われていなければなくします。ECRSの4つの原則と順番は、「ECRS(イクルス)とは?」の記事で詳しく扱っています。
図の内容(テキスト)
図に出てくる項目
- 申請者が共有フォームで稟議を申請する
- 総務が見積書の添付と記入を確認する
- そろっている?
- 申請者が同じ画面で直す
- 金額は10万円以上?
- 課長が承認する
- 課長・部長・社長が順に承認する
- 承認済みの一覧から発注する
流れ(矢印)
- 申請者が共有フォームで稟議を申請する → 総務が見積書の添付と記入を確認する
- 総務が見積書の添付と記入を確認する → そろっている?
- そろっている? →(いいえ)→ 申請者が同じ画面で直す
- 申請者が同じ画面で直す → 総務が見積書の添付と記入を確認する
- そろっている? →(はい)→ 金額は10万円以上?
- 金額は10万円以上? →(未満)→ 課長が承認する
- 金額は10万円以上? →(以上)→ 課長・部長・社長が順に承認する
- 課長が承認する → 承認済みの一覧から発注する
- 課長・部長・社長が順に承認する → 承認済みの一覧から発注する
改善前と後の図を並べると、何が消えて何が動いたかが一目で分かります。この月16時間30分と6営業日は架空の例の数字で、どの会社でも同じだけ減るわけではありません。改善前後を描き比べて効果を確かめる方法は、「As-Is/To-Be分析のやり方」の記事で扱っています。
ムダを見つけた後の3つの進め方
見つけたムダは、原因がすぐ分かるものはECRSで改善案に、原因が分からないものはなぜなぜ分析で掘り、なくせない手作業は自動化の候補にする、の3つに振り分けます。
| ムダの状態 | 次の一手 | 詳しい記事 |
|---|---|---|
| 原因がすぐ分かる | ECRSでE(なくす)から改善案を出す | ECRS(イクルス)とは? |
| 原因が分からない・繰り返す | なぜなぜ分析で原因を掘る | なぜなぜ分析のやり方 |
| なくせない手作業が残る | 自動化の候補にする | 自動化する業務の選び方 |
原因が明らかなもの:ECRSで改善案を出す
「押印のために持って回っているから待つ」のように原因がはっきりしているムダは、そのままECRSに当てはめます。E(なくす)、C(まとめる)、R(入れ替える:順番や担当を変える)、S(簡単にする)の順に「この工程はなくせないか」から考えるのが基本です。
原因が分からないもの:なぜなぜ分析で掘る
「差し戻しが月6件ある」のは分かっても、なぜ不備が出るのかが分からないことがあります。そういうムダは、「なぜ?」を繰り返して手順のどこに原因があるかを探ります。担当者の注意不足で片付けず、手順や仕組みの原因まで掘るのがポイントです。
なくせない手作業:自動化の候補にする
ECRSで考えても残る手作業は、自動化の候補になります。順番が大切で、先に「なくせないか」を見てから、残ったものを自動化します。
ミナミさん
現場の業務改善担当
転記のムダなら、RPAで自動化すれば一発で解決ですよね?
スパーク先輩
DrillSparkコンサルタント
その前に、その転記そのものをなくせないかを見よう。なくせる作業を自動化しても、ムダが速くなるだけだからね。自動化はECRSの最後、Sの手段なんだ。
事務のムダ取りでよくある4つの失敗と対策
事務のムダ取りがうまくいかない原因の多くは、「人を責める」「全部やろうとする」「数字を取らない」「ムダを速くする」の4つです。
失敗1:ムダの指摘が「担当者の仕事が遅い」という話になる
ムダを探すうちに、「〇〇さんの確認が遅い」という話になると、現場は口を閉ざしてしまいます。対策は、印を人ではなく工程と矢印に付けることです。「この承認の手前で4日止まっている」と書けば、責めるのではなく手順の話として話し合えます。
失敗2:最初から全部の業務を洗い出そうとして止まる
部署の業務をすべて図にしてからムダを探そうとすると、描き終わる前に日常の仕事に押し流されがちです。対策は、1つの業務・1枚の図から始めることです。1枚で改善が1つ進めば、次の業務を描く理由も生まれます。
失敗3:印象で「ムダ」と決めて反発を受ける
「この報告書はムダだと思う」と印象で言うと、作っている人から反発を受けます。対策は、1件の時間と件数を書いてから話すことと、その資料を誰が何に使っているかを先に確かめることです。つくり過ぎに見えても、監査や法令のために必要な書類もあります。
失敗4:なくせる作業をそのまま自動化する
転記や集計が大変だからと、手順を変えずにツールで自動化すると、なくせたはずの作業が残り続けます。対策は、ECRSの順にE(なくす)から考えることです。自動化は、なくす・まとめる・入れ替えるを試した後の手段と考えます。
まとめ|まず1つの業務を図にしてムダの印を付けよう
この記事のまとめ
- 7つのムダは付加価値を生まない作業の7分類。ムリ(負担の偏り)とムラ(ばらつき)とつながっている
- 事務では、転記・承認待ち・手渡し・探し物・差し戻し・誰も読まない資料・たまる書類として現れる
- 業務フロー図では、戻る矢印・止まる箇所・同じ内容の工程・担当をまたぐ矢印としてムダが見える
- 印を付けたら「1件の時間×月の件数」で月の時間に直し、大きい順に改善の候補を選ぶ
- 改善はECRSのE(なくす)から。自動化はなくせない手作業が残ってから考える
7つのムダは工場だけの考え方ではありません。承認待ちも転記も差し戻しも、事務の手順の中に形を変えて潜んでいるムダです。対応表の「業務フロー図での見え方」を手がかりにすれば、自分の仕事の中からムダの候補を探せます。
大切なのは、ムダを人ではなく工程に結び付け、時間に直して話すことです。そうすれば、ムダ取りは誰かを責める場ではなく、手順を良くするための話し合いになります。
まずは、差し戻しや転記が多い業務を1つ選び、今の流れを1枚の図にして、7つのムダの印を付けてみてください。
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